老人たちの裏社会、余生は生き地獄になった 死ぬよりも上手に老いることが難しい時代

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“ほんの少し前まで、老人は-中略-社会的弱者としてとらえられていた。ところが、今や街では万引きをしまくり、激高しては暴力に訴え、勘違いを募らせてはシニアストーカーに転じ、「死ぬまでセックス」とばかりに色欲にハマるなど、「若者のお手本となる先人」どころか、老害を撒き散らすだけの暴走ぶりが目立つ”

 

彼らに何が起きているのか。統計データをなぞりながら、万引き、暴行、ストーカー、売春などに走る高齢者を取材し、本書では異様な実態を明らかにする。

簡単に死ねない時代になった

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「唯一の憂さ晴らし」と5年前に突如目覚めた万引きをやめられない86歳の女性。毎日のように69歳の女性に自分が詠んだ句を添えて郵便ポストに手紙を差し入れる80歳男性。68歳の女性は色目をつかって、孤独な男性たちの預貯金から3000万円以上を搾り取る。

寂しいから、社会から孤立してしまっているから。犯罪白書は老人の犯罪を語る。確かに孤立死も急増している。80歳以上の自殺者数は年2500人を上回る。なぜ寂しいのか。なぜ孤立してしまうのか。簡単には死ねない時代になったからである。

“これまでは「やり残したことはないか」「命を燃焼し尽くして人生を生き切ったか」などと追及、検証する間もなく先に寿命が来てしまっていた。余計なことを考える間もなく、生活に追われ、生き続けるのに必死なうちに息絶えるのが当たり前だったのだ。 ”

 

“死ぬよりも、上手に老いることの方が難しい時代になってしまった。 ”

 

最終章の章題は「生き地獄化する余生」である。悟りの境地に達した老人は漫画の世界だけなのだろうか。悶々としてしまうから、「生涯現役」と悪びれもせずにストーカーに走る。自らが80歳を超えながら70歳の妻をDVする。「女として輝こう」の謳い文句に釣られ、62歳でホテヘル嬢になる。

タイトルに「裏社会」とあるが、残念ながら、もはや「裏」とは言えない現象になってきている。本書に広がる世界は、我々全員がこれから対峙しなければならない社会そのものである。

栗下 直也 記者、批評家

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くりした なおや

1980年生まれ、東京都出身。記者、批評家。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科経営学専攻修了後、専門紙記者のかたわら書評サイト「HONZ」や週刊誌、月刊誌などでレビューを執筆し、22年に独立。新橋系泥酔派を自認するが、酒場詩人は目指していない。著書に『人生で大切なことは泥酔に学んだ』(左右社)、『得する、徳。』(CCCメディアハウス)、『政治家の酒癖 世界を動かしてきた酒飲みたち』(平凡社新書)など。

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