「介護のお金」は、いったいどれくらいかかるのか? 期間は5年超、「500万円近くかかる」は本当?

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そうした中で知っておきたいのは、「世帯分離」という手法です。

例えば、Aさんは父親が亡くなったあと実家に戻って母と同居することにしました。会社員であるAさんが世帯主になり、専業主婦である母親を扶養対象にする予定です。しかし、その場合はAさんが母親の介護保険料を支払うことになり、保険料の負担が重くなると考えられます。そこで検討したいのが世帯分離なのです。

世帯分離とは、介護のため親子が同居していたとしても、親世代と子世代は生計を別にして暮らし、住民票の世帯を分ける、ということです。自治体の窓口でその旨を伝え、住民票の異動届を出すことで手続きできます。受理されたら、健康保険や介護保険の保険証を再発行してもらいます。

1つの世帯に属する全員が住民税の負担がない「住民税非課税世帯」では、介護保険料や実際に介護保険サービスを利用する場合の自己負担が軽減されます。上記の場合、Aさんの母親には収入がないため、世帯分離をすれば住民税非課税世帯となることから、介護保険料は年間5万円ほど安くなりました。

親の介護費用は親が負担するのが原則 

実際に介護保険サービスを利用する場合の負担についても見ていきましょう。

Aさんの母親が要介護になり、特別養護老人ホームのショートステイを利用すると仮定します。所得の低い世帯の人には、特養などでの食事代や部屋代などを補助する制度があり、世帯分離によって、1日の食事代は1380円から390円に、居住費は1970円から820円に軽減されます。2週間の滞在では、約4万7000円から約1万7000円になり、約3万円も抑えられます。

ただし、親が75歳未満の場合、世帯分離をすると親が1人で国民健康保険に加入する必要があり、負担が増すケースもあります。社会保険料を計算したうえで、世帯分離をしたほうがいいかを検討したいところです。

親の医療費や介護費用は、親が負担するのが原則です。なぜなら、子が負担すると、子自身のライフプランに影響が生じかねないからです。

もし、現状の生活で親への仕送りなどができたとしても、今後、自分の子の教育費が増えてくることで負担が重くなったり、自身の老後金の準備に支障をきたしたりする可能性があります。「親の資金の範囲でできることをする」、を原則にしましょう。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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