注目の日銀決定会合――1月は新たな動きはなし 12月決定の影響と効果見極める段階と判断

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日本銀行は、昨年12月の金融政策決定会合で決めたイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用見直しの影響と効果を見極める局面にあり、現段階でさらなる修正を急ぐ必要はないとみている。複数の関係者への取材で分かった。

日銀は17、18日に開く金融政策決定会合に向け、ぎりぎりまで経済・物価情勢や金融市場の動向を見極めて政策対応の是非を判断する。

  関係者によると、昨年12月の政策修正が市場に予想外と受け止められたことで、しばらくは債券市場のボラティリティーの高い状態が続くのはやむを得ないと日銀はみている。損失を被った投資家などの債券売り需要が収まり、新たな金利水準の目線が形成されるまでは、月間9兆円に拡大した国債買い入れの新たなめどにこだわらない積極的なオペで市場を支える必要があるという。

      日銀はYCCの再修正を急がないとの報道が伝わった後、外国為替市場では円売り圧力が強まり、対ドルで一時134円37銭まで下げ幅を拡大した。 報道前は133円90銭前後で推移していた。 

日銀は12月会合で、現行のYCC政策における長短金利目標を維持しつつ、長期金利(10年国債利回り)の許容変動幅を従来の上下0.25%から同0.5%に拡大した。市場機能の改善が狙いだが、足元の長期金利は上限の0.5%に達し、残存8、9年の金利が長期金利を上回るなどイールドカーブのゆがみも解消されていない。

市場には、市場機能改善を名目としたさらなる変動幅の拡大など追加的な政策修正の観測もくすぶる。関係者によると、今後の社債の発行状況など企業金融面を含めた政策修正の効果を見極める局面と日銀はみている。多様な年限の指し値オペや臨時の国債買い入れなど、金融緩和継続の強い姿勢をオペの積極化や工夫で示すことが重要であり、追加的な政策修正の段階にはないとの声もある。

日銀は足元の金利上昇を抑えるため国債の買い入れを増やしている。6日の債券市場では新発10年債の取引が0.50%で成立。日銀が12月に引き上げた許容変動幅の上限に達した。

  

変動幅上限を上回って金利上昇が続けば、日銀がさらに上限を引き上げるか、あるいはマイナス金利政策を放棄するとの臆測に拍車が掛かる可能性がある。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は、日銀のさらなる政策修正を織り込んでいる。 

 

展望リポート

会合後に新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)が示される。関係者によれば、原材料高やこれまでの円安に伴うコスト上昇を価格に転嫁する動きが、前回の昨年10月の展望リポートの想定を超えて広がっている。

消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の想定は、見通し期間である2024年度まで全ての年度で上方修正される可能性があるという。政府の総合経済対策における電気・ガス料金の負担軽減策は23年度を中心にコアCPIを抑制する要因になる一方、その反動も含めて24年度の見通しは現在の前年比上昇率1.6%から同2%前後に引き上げる可能性を関係者は指摘した。

景気は日銀が想定しているシナリオに沿って改善を続け、賃上げ機運の高まりも背景に物価の基調的な動きも着実に強まっていると日銀では判断している。しかし、日銀が目指す持続的・安定的な2%の物価目標の実現には春闘における賃上げの動向とその持続性や、減速感を強める海外経済など見極めるべき要素が控えており、経済・物価情勢を踏まえた金融政策の修正にも慎重な意見が多い。

--取材協力:.

(記事配信後の為替動向などを追加して更新します)

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著者:伊藤純夫、藤岡徹

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