大河好評!松本潤「どうする」と悩んだ"その人生" かよわきプリンス「家康」と松潤の意外な共通点
同作で松本が演じた道明寺司は、典型的な俺様でありオラオラ感の強い男性である。そこに、井上真央演じる牧野つくしと最初は対立するも徐々に惹かれ合い、道明寺の優しさやピュアな一面が垣間見えてくる――といった構成だが、世間的にはこの道明寺のイメージが松本のパブリックイメージを形づくったといってもいいだろう。
そしてドラマでついた多くのファンも、道明寺的なイメージを松本に求め、彼もそれを裏切らないようにしていったようにも思える。
しかし、嵐の中で年齢的にも末っ子の松本潤は、もともとは俺様キャラでもオラオラ男でもなかった。
「デビューしてからしばらくはオレ、嵐の中で“やられキャラ”的なポジションにいたよね。最年少ってこともあって、そういう感じになってたんだろうと思うんだけど。いつしかそうじゃなくなってきた」(『アラシゴト』2005年、集英社)
たしかに、いつしか“弱めの松本潤”は鳴りを潜めるようになってきていた。その理由を松本潤はこう自己分析している。
「きっと嵐の活動を通じて『1人できちんと歩かなきゃ』って思うようになったのが大きいんだと思う。それまでオレ、どこか甘えんぼうな性格をずっと引きずってた」(同)
1人でも歩くと決意したときに、自分の中の甘えと決別した松本。そして、この発言の後に出会ったのが『花より男子』である。松本の“1人の歩み”は、結果的にグループ全体を牽引することになる。
「天才」ではないかもしれない、しかし――
『どうする家康』演出統括の加藤拓は、松本と今回の家康の重なりに関して「プリンス感はすごくあります。(中略)弱さを感じさせても人の心を掴むのがすごくうまい」と語っている(『大河ドラマ「どうする家康」×TVガイド 徳川家康 HISTORY BOOK』2022年、東京ニュース通信社)。
第1話でも、妻である瀬名に「うちの殿は泣き虫、弱虫」とからかわれていたが、それを認め、ともに笑い飛ばしていた。
そもそも、家康が瀬名と初めて直接対面する場面の描き方も、自分でつくった木のうさぎで遊んでいるところを瀬名に見られてしまうという、かわいらしさを押し出したものだった。
今回の松本潤が演じる徳川家康が醸し出すのは“弱さゆえの魅力”と言ってもいいかもしれない。
家康の子孫であり、今年の元日に19代当主となった徳川家広氏は、家康をこう捉えている。
「信長と秀吉は間違いなくある種の天才です。(中略)それに比べると、家康公は極めて普通の常識人であると思います。天才ではありませんから、人の助けがいる」(同)
初回から、徳川家臣団の面々も魅力的に描かれており、今後はきっと、家康ひとりだけではなく、チームとして強くなっていくであろうことを予感させた。
松本は『どうする家康』の放送直前に「現段階からすると、この人が天下取れるの? 本当に取れるの? と思うような始まり方」と語っていた。家康の物語を「ある種サクセスストーリー」とも分析している(NHK『ひるまえほっと』2023年1月4日放送)。
天才ではないかもしれないが、人の助けを借りながら大成していく――。
そう考えると、第1話の描き方は松本潤本人ともリンクする。
初めてのドラマで泣いていた少年が、仲間とともに“国民的アイドルグループ”を築き上げ、ついに大河ドラマの主演を張るようになる。それは、強かったから、ではなく、かよわくナイーブだったからこそとれた“天下”だ。彼が体現するこの物語を、ドラマでも現実でも注視していきたい。
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