空き家は「2023年」に売却したほうがいい理由3つ 「相続登記」の義務化が2024年に迫っている

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不動産の価格が上がった際には2021年は売り出し戸数、在庫そのものが大幅に不足していた。その希少性により、需要と供給のバランスが崩れ、結果的に不動産価格が上がったという側面も大きい。逆に売り出し戸数の在庫が増えることで、価格競争が激しくなり安く売る方向に流れていく。金利上昇や在庫数増加のリスクを鑑みると、今が売却のタイミングだという見方もできる。

3、マンションの「見える化」で資産価値にも影響

最後に、相続資産である実家がマンションという方に向けて3つ目の理由をお伝えしたい。実は2022年4月にマンション管理適正化法が改正され、新しく「管理計画認定制度」がスタートしている。マンションでも戸建てと同様、建物・設備の老朽化や住人の高齢化、空き室化など課題が山積している。これに対応するため国交省が対策を強化し、新たなルール作りのために制定したものだ。マンションの管理計画が一定の基準を満たしていれば、マンション管理組合は地方公共団体から適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けることが可能となった。

「マンションの資産価値を守り、快適な住環境が確保」することを掲げた法整備そのものは、次世代に向けた取り組みとして評価すべきものだろう。しかしマンションそれぞれで管理内容には差があるのも実情だ。管理計画認定制度のもと認定されているマンションかどうかが可視化され、価格や売却価格などにも影響が出る可能性は否定できない。

ただ、マンションの住人ではない子ども世代がマンション管理にまで目を配るのは難しい。2022年の法改正以降、国交省から各自治体に制度開始の通達が出されている。だが現場の自治体ではまだ準備が整わず、本格的な始動は2023年ともいわれる。

マンション管理の「見える化」が進む前の今こそ、実家の空きマンションのあり方を考える時期でもある。遠方で管理が難しい空きマンションに居住予定がないのであれば、売却を検討するのも一案だろう。

以上3つの要因により、2023年は「実家」や「空き家」について考えるターニングポイントの年となる。相続予定のある家族や親族で話し合い、受け継いだ資産をどのように生かすかを話し合うきっかけの年にしてほしい。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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