認知症の両親が活力を取り戻した“推し活"の力 「Be supporters!」に学ぶニッポンの幸福の形
リンダ・グラットン(以下、グラットン):お気に入りの選手を応援することを“推し活”と呼ぶのだと聞きました。
沖中:この取り組みは富山以外の、例えば川崎や、神戸、あるいは山口にも広がっていますが、同じような現象が生じています。
それまでは元気がなく、顔の表情も曇りがちだった高齢者の方がBe supporters!の活動に参加することで、豊かな表情を取り戻したり、歩行器を使っている方が自力で足を踏み出したり、要介護度が改善されたように見えるほど元気になるといった、専門家も驚くようなことが起きています。
グラットン:施設にお邪魔した時、高齢者の方々がお気に入りの選手の応援グッズを持ったり振ったりして、積極的に動いておられて驚きました。心も体も動かして応援することは、高齢者にとってとても大事だと思います。
元気の循環が生まれた
沖中:以前は、職員が高齢者の方に「一緒に体操しましょう」と言っても、楽しんでもらうところまで行くのは難しかったようです。しかしBe supporters!の活動をきっかけに主体的に体を動かす高齢者の方の姿を見て、施設職員の方も驚いたようです。
もう一つの効果として、高齢者の方から職員の方に対して元気がフィードバックされるようになったことがあります。
職員の方はみな献身的に高齢者の方に元気を届けようと日々頑張っています。これまでは一方通行であることも多かったのですが、Be supporters!で高齢者の方が元気になることで、その元気が職員に返ってくるという循環が生まれて、職員と高齢者の関係性が向上しました。これも新しい発見だと思います。
さらにもう一つ、いいサイクルがありました。
高齢者施設に入居している高齢者の方のお子さんたちは、認知症になって元気がなくなったご両親の姿を見て悲しまれていました。
それが、生き生きと応援している姿を見て、お子さんたちもものすごく嬉しい気持ちになったというのです。