「クルド人施設銃撃」で露呈した仏移民差別の暗部 根強い「国は移民を守ってくれない」という不満
ユダヤ系、イスラム系はイスラエルのパレスチナ自治区での対立の影響も受けており、不満を持つ在仏イスラム教徒は、ユダヤ礼拝堂シナゴーグやユダヤ文化センターへの放火など襲撃を繰り返し、ユダヤ人墓地荒らしも断続的に起きている。最近増えつつある中国系移民富裕層が、アラブ系の若者に襲われる事件も頻発し、今年はフランス国内のロシア関連施設に落書きなどが確認されている。
移民同士のもめ事には一歩引いた姿勢の仏政府
20年以上治安分析官を経験してきた筆者から見ると、フランスの治安当局である内務省では、フランスの一般国民に直接被害を及ぼす2015年のパリ同時テロや2016年のニースの大型トラックによる歩道への突入テロなど、イスラム過激派の無差別テロなどへの警戒感が高い一方、移民同士のもめごとに対して一歩引いた姿勢が感じられる。
例えば、マルセイユではアラブ系の不良グループ同士の暴力事件で死者が出る場合も少なくないが、市民が巻き込まれる例は少なく、捜査も熱心ではないという印象がある。急増する中国人が住み、アラブ人も多いパリのベルヴィルで中国移民が営んでいる宝石店や両替店がアラブ系不良グループに襲われても、簡単に犯人の身柄が釈放されていると批判され、何度も中国系住民が抗議デモを行っている。
一方、昨年10月にパリ郊外の中学校で発生した、教師がイスラム教預言者ムハンマドの風刺画を教室で見せてチェチェン系の若者に殺害された事件では、教師が表現の自由を守ったとして、エマニュエル・マクロン大統領も出席して葬儀が行われた。
教師は歴史を教える白人で、今では教科書にも登場している。2015年1月に発生した風刺週刊紙シャルリ・エブドー編集部襲撃テロで死亡した白人編集者たちも英雄視され、事件への対応も大規模だった。
建前上、多文化主義で多民族を受け入れているフランス。本来は平等に扱われるべき問題が、現実的にはそう受け止められていない印象を移民社会に与えている。
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