「クルド人施設銃撃」で露呈した仏移民差別の暗部 根強い「国は移民を守ってくれない」という不満
フランスのクルド人コミュニティーは、ほぼ90%がトルコ出身のクルド人で構成され、約6500人のイラン系クルド人と4800人のイラク系クルド人、残りはシリア、レバノン、およびコーカサスの旧ソ連共和国出身のクルド人で構成されている。フランスは国勢調査で人種や出身国別の調査を禁じている(移民もフランス人として平等に扱うため)ので、正確な数字はわかっていないが、一般的に約15万人の在仏クルド人が存在しているといわれている。
彼らの中にはシリア内戦の際、平和なフランスでの生活を捨て、クルド軍に加わる人も少なくなかった。トルコ政府は継続的にクルド人勢力に圧力を加えているため、フランス在住のクルド人は、トルコの弾圧を恐れている。捜査当局は容疑者が個人的な人種差別感情だけで銃撃におよんだのか、背後に反クルド人組織がいるのかも含め、捜査を続けているが、個人の犯行という線に傾いている。
社会システムになじめず、孤立するクルド人も
フランスでのクルド移民の歴史は浅く、最初に確認されたのは1965年とされる。フランスとクルドの2国間協定で労働者としてフランスが受け入れたのが始まりで、その後は政治的混乱で難民としてヨーロッパに移動するクルド人が増え、今に至っている。
移民2世、3世は、フランス人としての自覚が強まる一方、クルド人コミュニティーは彼らのアイデンティティー強化のためのクルド語とクルド文化の浸透に力を入れており、今回襲撃されたクルド文化センターもそのために活動していた。
また、政治難民、経済難民としてフランスに到着したクルド人は、自国で十分な教育を受けていない農村部出身者が多く、フランスでも単純労働に従事している例は少なくない。そのため、フランスの近代的社会システムになじんでいない者も多く、フランス人側は違和感を持ち、差別の感情も消えていないため、クルド人は孤立している。
フランスは日本と異なり、ヨーロッパ最大規模の60万人のユダヤ人系住民と約600万人のアラブ系住民が存在する。中国系移民も急増中だ。
ユダヤ系は富裕層が多く、ユダヤ人学校も全国に整備されている。一方、アラブ系はアラブ人学校もなく貧困層が多い。社会の隅に追いやられる若者はイスラム過激派のテロリストになる例も多く、彼らは実際、国内テロを引き起こしている。
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