日銀ショック!金利上昇で株価上がる業種はどこ 統計的手法で「上がる業種」「下がる業種」を抽出

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さて今回の日銀ショックに話題を戻しましょう。新年(2023年)の金融市場での大きな関心事は、さらに金融緩和の見直しが行われていくかどうかです。筆者が考えるに、日銀も「②悪い金利上昇」による景気や株価へのネガティブな影響は避けたいのが本心でしょう。このため金融緩和の本格的な見直しは「賃金・給与の上昇」によるデフレ脱却が見えてから行われると考えられます。

金利上昇で株価が上がる業種、下がる業種

とは言え、これまでの金利が下がってきた環境とは異なるため、株式投資などで銘柄を選ぶ際には、金利が上昇するなかではどのような業界が物色されていくかを考えておく必要があります。そこで、金利が上昇するなかで株高が大きい、あるいは株安が大きい業種にはどのようなものがあるのか統計的な手法で探ってみました。

図表3を見てみると、10年国債利回り(金利)が上昇したときに株高が大きい業種の第1位は空運業でした。金利が1%上がると、空運業の株価は平均して13.7%上昇するという関係が示されます。金利が上がると円高につながるため、みなさんも海外旅行がしやすくなるでしょう。飛行機の利用が増えれば空運業の売り上げ拡大となります。また航空機の円ベースの燃料費も下がることも業績プラス要因です。

第2位の鉄鋼業や輸送用機器に関しては、金利上昇が直接業界にプラスに働くというのではないようです。金利上昇を伴う景気回復(①良い金利上昇)で、製品の需要が増えて売り上げが伸びることが理由と考えられます。

第4位のパルプ・紙も景気回復での需要増が理由ですが、製紙原料の木材の円ベースの輸入コストが減ることも業績にプラス要因です。第5位の銀行業は、貸し出したお金の利息が増えて収益にポジティブなことが理由にあります。

一方、金利上昇時に下落が大きい業種の第1位は不動産業となりました。金利が1%上昇すると平均して13.4%株安となることが示されました。金利上昇時にはローンを組んで不動産を買う人が減ってしまうため、不動産業の売り上げが低下することが理由です。

第3位の海運業は金利上昇に伴う円高が業績に対してマイナスの影響が大きい業種です。運賃をドルベースで受け取るケースが多いことから、円高になると円ベースで受け取り額が減ってしまうためです。

第4位の鉱業に関しては、低金利下では商品など資源に投資する資金が増える一方で、金利が上昇すると投資資金が商品市場から流出して市況が悪化することが理由にあります。保有している原油などの鉱区にかかる権益の価値が下がってしまうためです。第2位に医薬品、第5位がサービスとなっているのは、金利上昇が与える成長株へのマイナスの影響が大きいということが背後にあるのかもしれません。

新年は、金利上昇のメリット、デメリット業種を頭にいれておく必要があるでしょう。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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