気候変動対策の国際交渉「COP」はもはや無意味だ 斎藤幸平・東京大学大学院准教授に聞く

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斎藤幸平・東京大学大学院准教授
斎藤幸平・東京大学大学院准教授が語る、現在の気候変動対策の問題点とは(写真:梅谷秀司)
『人新世の「資本論」』『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』を著した斎藤幸平・東京大学大学院准教授は、気候変動のCOP交渉の実態を「グリーンウォッシュ」(まやかしの環境対策)と断じ、新たな仕組みを考えるべきだと主張する。

――国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が2022年11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されました。地球の平均気温の上昇を産業革命時のレベルから1.5度以内に抑えるための温室効果ガス削減対策の強化では、合意できませんでした。

今回のCOP27の最大のテーマは気候変動による「ロス&ダメージ」(損失と損害)を被った開発途上国への支援だった。形のうえでは合意したが、これを「前進」だと呼ぶ気持ちは湧いてこない。むしろ、今回のCOPで「1.5度目標」の達成が事実上不可能になった現実を私たちはしっかりと反省する必要がある。今後、地球環境は危険な状況になり、食糧危機や水不足、自然災害のリスクが世界的に増大していく。

「私たち市民はCOP27参加をボイコットすべきだ」と、私は開催前から繰り返し指摘してきた。

エジプト政府は非常に強権的な支配体制を敷いており、6万人近い人々が拘束されているという。気候変動問題における弱者であるエジプトの市民はCOP27の会場には近づくこともできなかった。

言論の自由がない国の、社会から隔絶されたリゾート地をわざわざ世界中から二酸化炭素を排出して訪れて、会議に参加してもどれほどの意味があるのか。まさしく「グリーンウォッシュ(まやかしの環境対策)」の典型例ではないか。環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんがボイコットを呼びかけたのも当然のことだ。

COP28もグリーン・ウォッシュとなる

――次回のCOP28は、2023年にアラブ首長国連邦(UAE)で開催されます。

化石燃料を主たる収入にしている国で、果たして脱炭素化に向けた意味のある議論ができるわけがない。次回もグリーン・ウォッシュとなるだろう。これは、COPが形骸化していることを示唆している。

実際、スタートしてから30年近くになるが、合意文書には「化石燃料の削減」という当たり前の内容すら入ったことがない。世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量は減るどころか大幅に増えている。その点だけをとらえてもCOPは失敗だと言える。もうこれ以上無駄にする時間はない。同時に、代わりの方法を探るべきだと思う。

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