日本にも存在「破局噴火」で壊滅リスクある火山6つ 住民の大量死や深刻な寒冷化を引き起こす

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③フレグレイ平野(イタリア)
図版作成:小林美和子

ナポリは、火山の脅威にさらされつづけてきた不運な都市だ。東に「世界で最も危険な火山」と称されるヴェスヴィオ山が眼前にそびえ、西に5キロほどの所にはイタリア語で「燃える平野」を意味する巨大カルデラのフレグレイ平野が広がる。

フレグレイ平野は、イエローストーン国立公園と同様に、そびえ立つ火山の火口から噴火するといった単純なものではない。カルデラの直径はヴェスヴィオ火山の150倍もあり、3万7000年前と1万2000年前に破局噴火を起こした。これらの噴火は、ヨーロッパでは過去20万年間で最大規模だった。この噴火が「火山の冬」を引き起こし、ネアンデルタール人を絶滅させた可能性がある。

最後に噴火した1538年以来、500年以上沈黙を続けている。この長い休止期間を終えて「近い将来、マグマが突然噴出して、破局噴火を引き起こす」とイタリア国立地球物理学火山学研究所は警告している。

④白頭山(北朝鮮・中国)
図版作成:小林美和子

アジア大陸にも危険な火山が潜んでいる。中国吉林省と北朝鮮両江道の国境地帯にまたがる白頭山(別名、長白山)である。北京の地質学研究所が、火砕流に埋もれていたカラマツの幹を発見して年輪分析から割り出したところ、946年に紀元後では世界最大規模の巨大噴火を起こしたことが突き止められた。噴出量は推定83~117立方キロという膨大なものだったが、この噴火の存在は氷床コアからは判明しなかった。

このとき、火山灰が偏西風に乗って日本に飛来し、『興福寺 年代記』に「天慶(てんぎょう)九年(946年)10月7日夜に雪のような灰が降った」という記録がある。北海道南部と東北地方北部では5センチも降り積もった。青森県の小川原湖(おがわらこ)の堆積物の分析から、噴火は1年の間隔をおいて2回あったらしい。

地震がほとんどなかった朝鮮半島で、東北地方太平洋沖地震後、多い月には300回以上も起き、規模もM3~4になることがある。温泉の水温上昇が相次いで報告され、山麓では火山ガスによる木の枯死が目立つ。いつ噴火してもおかしくない状態がつづく。

山頂に「天池(チョンジ)」と呼ばれる巨大なカルデラ湖がある。約10億トンという水が貯まり、噴火で決壊すれば、鴨緑江、松花江、 豆満江に流れ込んで下流に大洪水を起こしかねない。もしもマグマが湖に流入したらとてつもない水蒸気爆発を起こす可能性もある。中国の専門家は、白頭山が噴火すれば半径60キロ以内に住む約10万人に大きな災害がおよぶと警告している。

中国や韓国の研究者から大きな噴火があり得ると指摘され、ロシア非常事態省、韓国気象庁も警戒を強めている。北朝鮮と韓国は2011年に白頭山の共同調査に合意した。両国の協調姿勢は珍しい。大規模噴火の場合、北朝鮮や中国だけでなく、日本やロシア、さらには地球レベルの気象への影響が懸念される。

白頭山は朝鮮民族の発祥の地とされ、北朝鮮の国民にとっては思い入れの強い山である。第2次世界大戦前は抗日ゲリラの拠点ともなり、故・金正日(キムジョンイル)は白頭山山中の密営で生まれたとされ、北朝鮮の聖地になっている。

韓国、北朝鮮の国歌(愛国歌)の歌詞には白頭山が登場する。

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