無意識に「食べ散らかす」私たちの食を変える方法 料理研究家・枝元なほみさんが考える食べ物の生かし方

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枝元なほみさん(撮影:朝日新聞出版 写真映像部 松永卓也)
ビッグイシュー基金の共同代表を務めるほか、農業生産者のサポートや「夜のパン屋さん」「大人食堂」などフードロス×飢餓ゼロ運動に力を注いでいる料理研究家の枝元なほみさん。
枝元さんは、これまでの価値観のままで暮らしていては未来を食べ散らかすことになる、と危惧します。新刊『捨てない未来──キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す』では、神経質になることなく、食べることを含めた私たちの暮らしの「豊かさ」について、改めて考えてみることを提案しています。
料理研究家として、時には撮影のために家庭ならば2、3週間もつような食材を1日で使う仕事もあり、悩んできた枝元さん。だからこそ、フードロスについて地に足を着けて考えてきたことを、本書から一部を抜粋・改変して紹介します。

ビッグイシューのフラットな関係性

今の社会の仕組みが持つ歪みは、貧富の差の拡大という形で顕著に表れています。私自身が貧困の問題と関わるようになったのは、『ビッグイシュー日本版』(有限会社ビッグイシュー日本)との出会いがきっかけでした。

『ビッグイシュー日本版』は、ホームレスの自立支援を目的に2003年に創刊された雑誌で、住まいのない人たちが、路上でこの雑誌を販売することを仕事にしています。私は、創刊の翌年辺りから連載記事を担当して料理を作り、2019年からはビッグイシュー基金の共同代表となって活動に携わってきました。

この雑誌から初めて声をかけてもらったころの私は、社会のさまざまな仕組み、とくにお金の循環のあり方にものすごく腹を立てていました。

個人的な体験を1つあげると、ある行政機関から料理教室の講師の依頼を受けたのですが、公の仕事という理由でギャランティーが非常に少なく、大量の荷物を積んでタクシーで会場に行ったら赤字になってしまった。ところが、その会場はやたらと立派で、行き交う外エレベーターはガラス張り、庭では噴水まで派手に上がっている……。

ハードにばかりお金が費やされ、ソフトの部分、人へのお金、文化活動などへのお金が削られる現実に、荷物の中の大根を噴水に投げ入れたくなりました。

その私がビッグイシューの活動に共感したわけは、会社と販売者さんのフラットな関係、そしてお金の明快さにあったのだと思います。ただお金を差し上げるのではなく、「面倒見るよ」でもなく、仕事をつくっているのがすばらしいなと。

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