無意識に「食べ散らかす」私たちの食を変える方法 料理研究家・枝元なほみさんが考える食べ物の生かし方

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現在、販売者さんは、450円の雑誌を1冊売ると、約半分の230円が自分の利益になる。会社は220円で雑誌を制作し、活動を回していく。そして販売者さんたちは会社から雇われるのではなく、個人事業主として自分の思うように仕入れ、売ることができます。そうすると、「今日は雨降ってるから休む」とか言う人が出てきたりするのも、また自由でおもしろいんです。

私が社会のあり方、お金のあり方を考えるベースにはビッグイシューがあり、2011年1月に設立した「一般社団法人むかご」の発想の源もそこにありました。なぜ日本では農業で食べていけないのか。

ヨーロッパの多くの国では、農業に対する補助金が日本よりずっと充実していますが、それは、人が生きていくためには食べ物が必要だからでしょう。食べ物がビジネスの道具になり、価格を上げなければ成り立たないとなれば、「お金がなければ食べられない」という社会になっちゃう。

どうすれば農業という仕事を真っ当に成り立たせられるのだろう……。そう考え、これまで経済効率性ばかりに重きが置かれ、まさにむかご(長芋や大和芋の葉のつけ根につく球状の芽)のように見過ごされてきた農作物の価値をとらえ直したいと思って始めたのが、「チームむかご」の活動でした。

捨てられているむかごをお金にできないか

社会システムの歪みは、一次産業の問題にも深くつながっていると感じます。

20年ほど前、消費の激減していた麦の普及をしたいという企業からお声がけをいただき、6月16日を「麦とろの日」と銘打ってイベントを始めました。店頭で、大麦の隣に長芋などの山芋類を置いて販売したところ、麦だけでなく、芋の売り上げが伸びたのでした。そんな縁もあり、喜んでくださった長芋産地の方々から畑に呼んでいただけるようになりました。

枝元さんが注目してきた「むかご」(写真:Rhetorica / PIXTA)

その中で改めて出会ったのが、各地で廃棄されているむかごでした。むかごは、地上に落ちるとどんどん芽を出しますが、それが栽培に使われることはなく、農業者の方にとって、ある意味じゃまな存在でした。

でも、若いころにその辺に自生していたむかごをごはんに入れて炊き、うまい!と感動した覚えがあった私は、もったいないと思いました。そこで、むかごを取って販売できないかと考えたんです。

長芋を土から掘り出すのには大型機械が必要で、芋も重たく重労働ですが、むかごなら落ちたものを集めていけばいい。農業をリタイアしたおじいちゃん、おばあちゃんの小遣い稼ぎになったらいいなと。

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