無意識に「食べ散らかす」私たちの食を変える方法 料理研究家・枝元なほみさんが考える食べ物の生かし方

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規格外の野菜の扱いについて、最近もう1つ考えていることがあります。きっかけは、2021年にわかった私の間質性肺炎という病気です。この病気にはとくに決定打の治療薬がないため、近所の病院の先生が提唱している野菜スープを、大事な薬だと思って自分で作るようになりました。

キャベツ、玉ネギ、かぼちゃ、にんじんをざっくりと刻み、種も捨てずに加え、塩も入れずにただ煮出していくシンプルなスープですが、これを漉して飲むと、滋味が深くてすごくおいしい。朝、起きたらまず白湯を飲むという人たちのように、私はこれを作りおいて、毎朝温め、抹茶茶碗のような白いころんとした形の器を両方の手のひらで包んでふうふうと飲んでいます。

小さなかぶや間引きにんじん、間引き大根のしっぽでも、焼くだけでおいしく食べられる!(撮影:朝日新聞出版 写真映像部 松永卓也)

もともとは、煮出した野菜も一緒に食べるとなっていたのですが、この野菜はおいしくなくて。だって、だしがらですものね。でも、漉したあとでごみにはしたくないので、昨日は1日、冷蔵庫に貯まったその大量のだしがらの面倒を見ていました。ちゃんとおいしく食べられるようにひき肉を足して、味噌味とかカレー味で濃いめの味つけで料理しています。澄んだ滋養のスープのために、「捨てない」を頑張っています。

「規格」に合わない作物をどう生かしていくか

皮や種までまるごと煮出すこのスープは、知り合いの農園から届く有機野菜で作っています。そうすると、まあ私だからということもあり、めちゃくちゃおっきな野菜とか、曲がった野菜とかを「おまけしといたよ!」と言って送ってくれるんです。農家さんのところには、そのように姿形にちょっと問題があるというだけで、味は変わらないのに流通に乗りにくい野菜がたくさんありそうです。

そういう規格外と言われる野菜で作ったスープを商品にできないかな、と思いつきました。このスープなら、形の悪い子でもまったく問題なく生かせるし、有機野菜を最後まで無駄なく食べきることができるんじゃないかしら。最近、うちで作ったスープを、ガンで療養中の知人に冷凍保存していつでも飲んでもらえるように送りました。

ビッグイシュー・チルドレンを自称する私は、お金がめぐって仕事が生まれたらと、つい、考えちゃうんです。商品になれば、自分では作れない人たちにも試してもらうことができるし、だしがら野菜も、ベジカレーだとか、肉の入ったおかずだとかにしてセット商品にできたらな、と頭の中が忙しくなっちゃう。

各々の生活者が台所で捨てない工夫をすることに加え、おおもとの畑で、「規格」に合わないというだけで行き場を失う作物をどう生かしていくかまで広がっていったらおもしろいのになあ、と思うんです。

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