2023年の鉄道業界、新線開業と「値上げ」ラッシュ 各社が運賃改定、利用者には厳しい年になる
8月には、栃木県宇都宮市・芳賀町に次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」が開業予定だ。JR宇都宮駅と芳賀町内の工業団地を結ぶ約15kmの路線で、全線の軌道を新設するLRTは国内初。インフラは市と町が整備・保有し、開業後の運行は第三セクターの「宇都宮ライトレール」が担う「公設型上下分離」方式で運営する。
LRTは宇都宮市が掲げる「ネットワーク型コンパクトシティー」政策の主軸の1つ。市の東西を結ぶ交通の軸として、少子高齢化が進む中マイカーに頼らない移動手段の充実を図る狙いがある。
同線も開業延期を重ねている。2018年の着工時には2022年の開業を目指していたが、用地取得の遅れなどから2023年3月に延期され、さらに一部区間の工事の遅れから同年8月に後ろ倒しに。建設費も当初予定を約220億円上回る約680億円まで膨らんだ。2022年11月には試運転中に脱線事故が起きるなどの問題もあったが、現時点では2023年8月開業の見込みだ。マイカー社会の地方都市でLRTがどのように受け入れられるかは、今後の地方交通政策にも影響を与えそうだ。
利用者には厳しい「値上げラッシュ」
久々の「新線ラッシュ」となる2023年。だが、利用者には負担となる「運賃値上げ」も相次ぐ。
3月には東急電鉄、4月にはJR西日本の一部と近鉄、5月にはJR四国、そして10月には南海電鉄も実施予定だ。京王電鉄、京急電鉄も秋ごろの値上げ方針を示している。また、JR東日本は3月から通勤定期券を約1.4%値上げすると同時に、ラッシュ時の混雑緩和を狙って10%値下げしたオフピーク定期券を導入する予定だ。
これらは主にコロナ禍による減収を補うための施策だが、実際には運賃が上がる鉄道はこれだけではない。このほかにもJRや大手私鉄各社が、ホームドア設置などバリアフリー施設整備費用を運賃に上乗せできる制度を活用し、10円程度の実質的な値上げを行う。物価高が続く中、利用する側にとっては痛手だ。
複数の新路線が開業する一方、全国の鉄道各社が予定するダイヤ改正では減便も目立つ。地方ローカル線の存続問題もさらに本格化しそうだ。コロナ禍でガラリと変わった鉄道を取り巻く環境。以前の状態には戻らないと見込まれる中、2023年も「鉄道のあり方」が問われる年となる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら