「63歳でMBAへ」元ホンダ子会社社長の数々の挫折 平均年齢が意外にも高い、MBAの受講者たち

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ところが養成課程の入学試験も2機関連続で落ちた。3度目の正直で合格したのが法政大学MBA(イノベーション・マネジメント研究科)内に設置されている中小企業診断士養成課程コースだった。

法政大MBAの面接で、小林さんは教員から「あなたが入学したら学生最年長なのはもちろん、ほとんどの教員より年上になります。大丈夫ですか」と確認された。

入学してみたら確かに自分が最年長だったが35人のクラスに60代が3人いた。「日本でリスキリングとか学び直しが注目されている影響もあるでしょうね」と小林さんは話す。

「目の前の仕事」を優先しキャリア考えず

小林さんは今、子どものような年齢の学生と机を並べ、グループワークや実習に参加している。

小林さん(写真:筆者撮影)

「上から目線にならないように」と心がけていたが、同級生の経験や知識に圧倒され、劣等感を感じることも少なくない。定年退職後にさまざまな人と付き合う中で、「大手企業にいる自分を無意識のうちに『上級』だと思っていたのかもしれない」と反省した。

「異文化研修講師の仕事は派遣で受けていましたが、派遣会社のスタッフの知識の豊富さに驚くことが多々ありました。でもね、相手の知識量に驚いたってことは、無意識のうちに『自分のほうが上』と思っていたということです。MBAの同級生には会社員、フリーランスといろいろいますが、話していると勉強になることばかり。自分は大学生のときの就職活動で厳しい競争を突破して大手企業に採用されました。その1回の成功体験だけで、『この会社には優秀な人が集まり自分もその一員』と思い続けてきたのかもしれません」

なぜ60歳のときに「解放された」と思ったのか。そして再び「働きたい」と思い直したのか。キャリアを模索する中で、自分の心の揺れも俯瞰できるようになった。

「50代半ばで業績評価が頭打ちになり、昇給・昇進の見込みがなくなった頃から、モチベーションが低下していたのだと思います。自分はそんなこと気にする人間ではないと思っていたけど、数十年所属する組織の評価に心を支配されていたのでしょうね。会社を辞めた後にすべて白紙になって、何等級とかいくらもらっているかとか、社外では何の意味もないなということがわかりました」

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