大阪市長選「ポスト松井」を懸けた前哨戦の意味 維新の「世代交代」と非維新「カジノの是非」
負けている側、つまり野党こそ予備選をやって候補者を一本化するべきというのは、実は橋下氏が2018年の著書『政権奪取論』で提唱している。このアイデアを、松井氏は自身の後継候補選びに応用したのではないかと松田氏は見る。
こうした指摘をどう思うか、反維新側に問うてみると頷く人も少なくない。「維新をただ批判するばかりでなく、勝つための戦略や旗印が必要なのはその通りだ」と。だが、そう簡単にはいかないのが実情だ。前回までは維新が都構想を掲げていたため、「大阪市廃止反対」で自民から共産までまとまれたが、今回は明確な政策的争点がないうえ、維新発足後の12年で自民をはじめ維新以外の議員は激減している。府知事選・市長選とも候補者はいまだ決まらず、それどころか自分自身の選挙に危機感を募らせる議員も多い。
IR計画の土壌問題やコストが争点?
こうした中、反維新側にとって一縷の望みとなっているのがIR誘致をめぐる状況だ。大阪府・市は今年秋頃に整備計画が国に認定されると見込んでいたが、12月になって国交省が「年内の認定判断は厳しい」と見解を示した。最大の理由は、建設予定地である大阪湾の人工島・夢洲(2025年万博の会場でもある)の地盤問題。液状化や地盤沈下が指摘され、費用や安全面の懸念が増しているのだ。
大阪市長選の候補者選定で自民の中心的役割を担う川嶋広稔・市議団幹事長は12月初めに開いた市政報告会で、この問題に時間を割いた。自らのスタンスを「IR・カジノそのものに反対はしないが、問題だらけの大阪の計画には反対」と説明したうえで、こう語った。
「橋下氏も松井氏も当初、インフラも含めてすべてカジノ事業者がお金を出す、(府市は)一円も出さなくていいと言っていた。それが気づけば、万博関連も含めてすべてのインフラ整備を大阪市がやることになり、液状化や土壌汚染対策に788億円もの負担をすることが決まりました。地盤沈下の問題もあり、さらなる追加負担も予想される。下手をすれば10年20年単位で1000億2000億かかるだろうと私たちは見ています」
「夢洲では高層建築を支える基盤となる洪積層まで80mもの杭を打ち込む必要があるのですが、大阪湾の洪積層は長期にわたって沈下していく特異な地盤であることが指摘されている。あんなところに建てては絶対だめだと防災学者は言います。このことは国交省にも伝えています。とんでもない費用がかかり、泥沼になりますよ、と」
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