鉄道開業150周年「節目の年」の出来事を振り返る 「離れ小島」の新幹線開業、赤字線問題本格化
新幹線が延びる一方で、これまで地域経済を支えてきた地方在来線を取り巻く状況は厳しさを増す。国鉄末期の1980年代には合理化策として各地で赤字路線の廃止が進んだが、それから30年超を経て再び赤字路線の維持問題が本格化している。
2022年は、すでに線区別の収支や輸送人員などを公表しているJR北海道、JR四国、JR九州に続き、4月にJR西日本、7月にJR東日本が平均通過人員(1日1km当たりの平均利用者数)が2000人未満の線区について収支状況などを発表した。
東洋経済による集計では、線区別収支を公表していないJR東海を除くJR旅客5社のうち、平均通過人員1000人以下だったのは98線区。とくに少ないのはJR西日本・芸備線の東城―備後落合(ともに広島県庄原市)間の「11人」(2019年度)で、100円の収入を得るのにかかる費用を示す「営業係数」は2万5416だ。
赤字ローカル線のあり方などを議論する国の検討会は7月、輸送密度(=平均通過人員)1000人未満の路線について、鉄道事業者や自治体の要請により国が主体的に関与して存続策や代替交通などを検討する協議の場をつくることが望ましいと提言した。今後、各地で本格的な協議が進むことになりそうだが、沿線地域には「廃止ありき」の議論を警戒する声も強い。
北海道新幹線の「並行在来線」問題
地方の在来線が抱える問題では、2030年度末に新函館北斗(北斗市)―札幌間の延伸開業を予定する北海道新幹線の「並行在来線」に関する動きも注目を集めた。
同新幹線の開業とともに、並行在来線の函館本線・函館―長万部―小樽間はJRから運営が切り離される。このうち長万部―小樽間約140kmについては3月、北海道と沿線9市町が全区間のバス転換で合意し、廃線が決まった。並行在来線の廃止は、北陸新幹線(長野新幹線)開業に伴い1997年に廃止された信越本線・横川―軽井沢間に次いで2例目となる。
課題は函館本線の長万部―函館間約148kmの扱いだ。北海道と沿線自治体の協議では、新幹線と接続する新函館北斗―函館間の存続を望む声は強いものの、30年間の収支が816億円の赤字と試算される全区間の存続は困難との見方だ。だが、同区間は貨物列車が1日に約50本も走る物流の大動脈。もし廃止されれば、北海道のみならず国内の鉄道貨物輸送に大きな影響を及ぼす可能性が高い。国は11月、北海道・JR北海道・JR貨物との4者による協議をスタートした。
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