餃子で復活「東スポ」に学ぶ"必勝ブランディング" 崖っぷちから「東スポブランド」を確立できた訳

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「今回の食品展示会でも、『東スポポテトチップス』を見た人は、最初はやっぱり笑っていました」と鈴木副社長は続ける。

「それが興味に変わり、そして恐る恐る、試食をする。すると、『これはうまい……』と、表情が少しずつ真剣になっていきます。想像していたより遥かにおいしいんです。

『東スポ餃子』もそうですね。最初は、『どうせ東スポが出した餃子だから……』と多くの人が味に対しては半信半疑なのが分かる。しかし、一度でも口にしてくれれば本気であるということが伝わっていく。実際に『東スポ餃子』を出している飲食店ではお客さんから高く評価され、リピートのお客さんが多い。

“東スポ”と“おいしさ”という意外な組み合わせが消費者にもウケているんです。いまだに東スポ餃子や東スポポテチと聞いたら思わずニヤリとしてしまうんです。まさにこれこそが東スポの言霊です」

「東スポブランド」を今後、どのように生かすか

「東スポブランド」の魅力と高い知名度は一気に食品業界に浸透した。そうした中、卸元や流通販売会社からも「東スポブランド」を理解した、さらなるスピンオフ企画やアイデアが多数、寄せられているという。

「この後の展開はまさに無尽蔵です。引き続き食べ物なのか? あるいは飲み物などに進化していくのか? このまま事業が順調に進んでいけば海外進出も夢じゃない。

ゆくゆくは、アンテナショップ的なリアル店舗が一つあっても面白いかもしれません。東スポ食堂なのか東スポ居酒屋なのかは、まだ分かりませんが、新橋の路面店が理想ですね。新橋は大人(オヤジ)の街ですから。

東スポらしく競馬の予想会を開催したり、店内にステージを作り、地下アイドルを呼んだり、そこでグッズ販売をしたりと、何でもできると思います。新しいおつまみや定食を作って人気が出れば商品化することもできます。今回の『東スポ餃子』を出発点として、いろいろ新たな展開もできるようになると思います。

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当然、東スポとのビジネスに関しては、これからも継続していくつもりです。次から次へと『ちょっと笑顔になる』という『東スポブランド』を活かして新企画を生み出していく。本当に打ち出の小槌です。もう戸田商事も走り出している。ここまできたら尻切れトンボで終わらせたくない。

そもそも途中で投げ出すようなことをしては信用を損なってしまいます。とにかく継続していくこと。苦しくても何があっても継続こそがいまは一番意義があることだと思いますよ。今回、『東スポ餃子』である程度、成功させるプロセスの感触はやんわりとつかみました。二の矢、三の矢を出していきたい。そのためには商社やメーカーとしっかり協業していく必要がある。

周囲を巻き込みながら確実に利益を出し、ウインウインな関係を構築できるのもすべて、東スポが持っているDNA、すなわち“人を和ませる言霊”なんです。可能な限り全国的にも展開が可能な商品を開発していきます」

岡田 五知信 テレビプロデューサー

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おかだ さちのぶ / Sachinobu Okada

早稲田大学卒。徳間書店『週刊アサヒ芸能』編集部や新潮社『フォーカス』編集部で編集記者を経て、1992年に在京キー局に中途入社。バラエティー番組や情報番組、特番などでディレクターやプロデューサーを担う。その後、報道局、コンテンツ事業局、宣伝部などを歴任し、現在は配信系事業を担務する。その傍ら、大学院においてコンテンツツーリズム、地域再生、メディア文化論などの研究に携わる。

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