「音楽映画」が驚くほど増え続けている切実な事情 「ビー・ジーズ」から「ホイットニー」まで多様

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ミュージシャンやコンサートが主役ではなく、録音スタジオや居住地域、会場、レコード会社、裏方ミュージシャンやスタッフ(エンジニア)に焦点を当てた硬派のドキュメンタリーが目立ってきたのは今世紀に入ってからの傾向だろうか。

『永遠のモータウン』(2004年、以下西暦は日本での公開年)や『トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男』(2006)、『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』(2013)、『メイキング・オブ・モータウン』(2020)、邦画だが『音響ハウス Melody-Go-Round』(2020)などの流れをくんだ、資料性の高い作品に強い興味を持つ音楽マニアが一定数いるのは確かだ。特定のジャンル・年齢層向けの映画がこれほど多いジャンルは特殊なのではないだろうか。

話題になった「ビー・ジーズ」

少し前に公開され話題となったのは『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』だろう(制作は2020年)。ザ・ビートルズのポップさとアイドル的な面を引き継ぐ形で人気を博した彼らの、メロディー・メイカー/サウンド・メイカーとしての才能、兄弟ゆえの声の魔法、ポップ、ロック、ソウル、ディスコといったジャンルを超えて一貫したいいメロディーの追求の物語だ。兄弟ゆえの確執、ディスコ時代のあまりの人気が裏目に出て逆風となったり、弟が若いほうから亡くなり、現在は長兄バリー・ギブの、現在は自分だけが残されてしまったという悲しみとともに描かれている(亡くなった弟たちの生前の発言も多く登場する)。

映画の原題 "How Can You Mend a Broken Heart"(彼らが1971年に大ヒットさせた曲名より)は、そんなバリーの苦悩を見事に言い当てている。ライヴ映像、関係者の発言も数多く登場、制作スタッフの深い理解・愛情が伝わる、とても丁寧に作られたすばらしいドキュメンタリーだ。

音楽映画の公開が増加した理由はいろいろ考えられる。

2020年=パンデミック以降、コンサートの再開のほうが映画館のそれよりも遅かった。生演奏ではないけれど、大音響を身体で浴びる空間としての映画館。筆者が音楽映画に求める主たる理由もこれだ。近年、シアター・ライヴやパブリックビューイングの会場として、映画館が音響設備を充実させてきたことが吉と出ている。

次ページ満足のいく「サウンド体験」を求める人々
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事