イタリアのクリスマス菓子「パネットーネ」の真実 本当においしいの?正しい選び方を教えます

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材料、例えばいちばんメインである材料の小麦粉は、高価なパネットーネにはオーガニック栽培で残留農薬や防カビ剤などが使われていない国産小麦が使われているかもしれない。私が大好きなパネットーネを作るパティシエは、小麦の生産者と毎年共同研究をし、その年の小麦の出来具合を見ながらパネットーネに適した粉を配合すると言っていた。そんな手間がかかった小麦粉は、香りや旨味、そしてパネットーネの膨らみや生地のしっとり加減が、最高なものになるに違いない。大量に農薬を散布して手間のかからない栽培方法で作られた小麦粉に比べたら、仕入れ価格は膨大なものになるだろう。

大きく膨らみ、縦に細く割けるのが上質なパネットーネの証拠(筆者撮影)

中に入っているオレンジピールだって、イタリア国産のオレンジを使い、何日も時間をかけてていねいに自家製しているとしたら、大量生産品のものよりも香りも味も、そして値段も格段に上なはずだ。

材料だけではない。パネットーネの伝統的な作り方は、パネットーネ用の酵母菌を使った天然酵母で、何十時間もかけて生地を発酵させる。だからシンプルな生地なのに、ふっくらしっとりと膨らんでいて、卵やバターのいい香りもして本当においしい。

おいしいパネットーネを見分けるコツ

だが、天然酵母の管理も、何十時間も発酵させるのも、手間や人件費がかかる。それらを節約するためにどうするかといえば、薬品などケミカルな方法を使って短時間で膨らませ、短時間で焼き上げる。すると膨らみも悪く、カサカサした仕上がりになる。そんな欠点を補うため、材料にしっとりさせる効果のある添加物や、本来はパネットーネに必要のない生クリームなどを加える。こうしてヘビーで消化の悪いパネットーネができあがるというわけだ。

そんなパネットーネがおいしいはずがないので、日本でパネットーネを買ってみても、「まあ、イタリアのクリスマス菓子ってこんなものなのね」と思ってしまう人が多い、ということなのだ。そんなふうに思われたら、パネットーネを愛してやまないイタリア国民は残念に違いないし、なによりも、おいしいパネットーネを食べてほしいという思いで働き続けるパネットーネ職人たちは悲しむに違いない。

だから日本の皆さんにお願いしたいのだが、パネットーネを買ってみようと思うことがあったら、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのだ。ブランド名や他人の意見を気にすることなく、ラベルの原材料や、生産された場所はどこかなどを確認したうえで、自分の目と鼻と舌で判断してほしい。

たとえばクラシックタイプのパネットーネであれば小麦粉、卵、バター、砂糖、天然酵母でできた生地にドライレーズンとオレンジやレモンのピールが入っただけというのが王道のレシピ。それ以外の材料がいろいろ入っているようなら注意が必要だ。生産地はもちろんイタリアであることが望ましい(ただしそれは輸入品の場合。最近は日本人シェフやパティシェたちが、イタリア本国に負けないパネットーネ作りをしているようだ)。

そしてイタリア人が一年で一番大事な日に、自分の大切な人たちと食べるお菓子だということを思い出し、大切に味わってみてほしい。

宮本 さやか ライター

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みやもと さやか / Sayaka Miyamoto

1996年より、イタリア・トリノ在住。イタリア人の夫と娘と暮らしつつ、ライター、コーディネーターとして日本にイタリアの食情報を発信する。一方、イタリア料理教室、日本料理教室、そしてイタリアの人々に正しい日本の食文化を知ってもらうためのフードイベントなども行っている。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」

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