前項のように言うと、「賃金では、数年前から、日本は韓国に抜かれていた」との指摘があるかもしれない。確かに、OECDのデータによると、年間平均賃金では、すでに2015年に、日本は韓国に抜かれている。そして、2021年には、日本が3万9711ドルに対して、韓国が4万2747ドルになっている。
ただし、このデータを見るには注意が必要だ。
ここでは、市場為替レートでドルに換算しているのではなく、購買力平価で換算している。これは、世界的な一物一価が成立する為替レートだ。2021年には、1ドル=100.412円と、1ドル=847.457ウォンだ。他方、市場レート、1ドル=109.754円と、1ドル=1143.958ウォンだ。
したがって、市場レートで見れば、日本は上記の値を0.915倍して3万6335ドルであり、韓国は、0.741倍して3万1667ドルだ。だから、まだ日本のほうが高い。
国際的地位の低下は、低い成長率と円安による
日本の1人あたりGDPが台湾や韓国に追いつかれたのは、2つの理由による。
第1は、円安だ。2013年から2014年、そして2022年に日本の相対的地位が急速に低下したのは、円安によるものだ。
第2の原因は、自国通貨建てでみた1人あたりGDPで、日本の成長率が低かったことだ。
2010年から2022年までの期間の成長率を見ると、つぎのとおりであり、大きな差がある。日本 1.11倍。韓国 1.60倍。台湾1.71倍。
日本の成長率が低くなる大きな原因は、人口高齢化が進んで労働人口の増加率がマイナスになっていることだ。ただし、ここでみているのは1人あたり計数なので、これによる影響はかなり緩和されている。
もう1つ注意すべきは、韓国においても、出生率低下によって、労働力が減少していることだ。それにもかかわらず、韓国の成長率が高いのは、技術進歩率が高く、産業構造が高度化しているからだ。
なお、以上で見た状況は、日本と韓国、台湾との間だけのことではない。日本と世界の多くの先進国との間で同様のことがいえる。いまの状態が続けば、日本は、先進国の地位を失う可能性が高まっている。
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