飲食店がアルバイトの確保で直面する「三重苦」 コロナ禍でも抑制されていた倒産が増えるおそれ

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1つ目が最低賃金の上昇だ。

昨今、バイトの時給は上昇している。それは人材不足の影響だけでなく最低賃金が引き上げられているからだ。2022年度の最低賃金は、前年度の上昇幅が小さかった反動もあって上昇幅が31円と過去最高を記録。東京都、神奈川県に続いて大阪府でも初めて最低賃金(時間額)が1000円台に乗せた。「最低賃金の上昇は全体の募集給だけでなく、ベテランバイトの賃上げにも影響する」(大手ファストフード幹部)ことも大きい。

しかし最低賃金の引き上げが、すべてのバイトの待遇改善につながっているわけではない。「103万円の壁」が残っているからだ。

バイトであっても年間の給与収入が103万円を超えると所得税を支払う必要がある。また、学生や主婦が扶養対象ではなくなることで、その親や配偶者の納税額が増えるため、バイトをする人たちは103万円の壁が近づく年末に、意識的にシフト調整を行う。

また、上限(103万円の壁)が変わらない中で、時給が上がっていることから、シフト調整の時期が前倒しになっているという。東京・港区にあるレストランの店長は、「従来11月に上限を意識する学生が多かったが、今年は10月ごろからシフト調整が増えて人が足りなくなった。近い将来、9月あたりからシフトを減らす学生も増えてくるだろう」と語る。

外食企業には悩ましい法改正

加えて「週20時間の壁」に悩む外食企業も増えている。

以前から「従業員501人以上」の企業は、一定基準を満たすバイトが社会保険(厚生年金及び健康保険)の適用対象になっていた。具体的には、学生ではないこと、週20時間以上働いていること、年間106万円以上の収入があることなどを満たす場合だ。

これが2022年10月から、法改正で「101人以上」の企業にまで拡大された。労働者を守るための制度改正だが、企業にとってみれば負担の増加になる。かといって、バイトのシフトを週20時間未満に調整しようとすると、新たな人手の確保が必要になってしまう。「(法改正は)外食企業泣かせ」(業界大手の幹部)と言われるのもそのためだ。

さらに2024年10月からは対象企業が「51人以上」まで引き下げられるため、中小の外食企業にとっても頭の痛い問題だ。

そこに追い打ちをかけるのが、外国人留学生の減少だ。

松屋フーズの瓦葺一利社長は、「外国人留学生は本来ならばビザが切れるところを、コロナ禍の特例で残ってくれていた。水際対策の緩和に伴い、秋ごろから母国に帰る人たちが増えている」と語る。

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