「考えない日本人」だらけになった日本企業の末路 イノベーションが生まれなくなった根本原因

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しかし実のところ、その新しさは、大勢に流されているだけであることがほとんどです。たとえば、皆さんの会社がDXを積極的に進めているとして、その理由は何でしょうか。巷でもてはやされているものに何となく飛びついただけではないでしょうか。「新しいことをする」とは、トレンドに従うことではありません。「誰もしていないことをする」ことです。

私が思うに、日本人はもともと、新しいことをするのが不得手です。日本が得意なのは、よその国が発明したものを取り入れて、改良して、さらにいい国産品をつくることです。

車や電気製品の製造はその好例ですが、現代に限った話ではありません。種子島にポルトガルから鉄砲が伝来したときもそうです。それからわずか50年の間に、日本は世界最大の鉄砲保有国となりました。戦国時代のただなかとあって、武士がこぞって武器を必要とし、量産体制をつくり、性能も上げていきました。

基本となる型を与えられたら、日本人はそれをより便利に、丈夫にブラッシュアップできます。それはそれですばらしい長所です。しかし、型を与えられるまで何も起こせないというのは、やはり不利です。

超高齢社会突入における「先進国」ができること

「型」を外から与えられなくとも、日本発のものはつくれるはずです。

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たとえば、日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しました。とすると、高齢者にかかわるデータや知見は、ほかの国より多く持っていることになります。また、世界で例を見ないほど高齢者がお金を持っています。

つまり、売れるポテンシャルがあるということです。それを生かした商品やシステムやノウハウをつくって、あとから超高齢社会になった国に教えたり売ったりすれば、日本は大金持ちになれます。世の中の、それどころか世界の役に立てます。そういうアイデアこそが、真にイノベーティブなのではないでしょうか。

ところが現実を見ると、イノベーションを標榜する会社からは、「DXがどうこう」という話ばかり。これもまた、アメリカや中国をはじめとするIT先進国の後追いにすぎません。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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