―― 当初、米国はガイドライン更新に乗り気ではなかった。
初期の米国の消極的な姿勢は、尖閣諸島を巡って起こり得る紛争に巻き込まれることへの懸念から来たものだ。かつて鄧小平が中国を市場経済として世界に開放して以来、米国の東アジアに対する政策には2本のトラックが生まれた。1本は、中国を世界に対する「責任ある株主」にするように促すこと、もう1本は日本をはじめとする同盟関係を管理することだ。
過去30年以上にわたり、この2本のトラックは、外交・安全保障政策における成功例だったといえる。しかし、南シナ海や尖閣諸島で中国が見せるようになった強引さにより、状況は変わった。これまでの米国の政策に対し、各地域から疑問の声が上がり始めたのだ。すなわち、「拡張する中国に対し、米国は何をするつもりなのか」という声だ。
ワシントンは中国に対して警告を発する外交声明を発表し続けているが、効果があったとはいえない。つまり、米国にとっては、中国と友好関係を結びながら、同時に同盟国との安全保障関係を強める、2つのトラックを走る政策を維持することは、困難になったといえる。中国は、米国との二国間の連帯を意図的に強くすることで、有利な状況を作り出そうとしている。もっと踏み込んでいえば、中国は、米国の同盟国が米国に対して不信感を持つよう、積極的な行動をしている。
こうした経緯で、日米防衛ガイドラインを見直すという2013年10月の決断に至った。また、安全保障条約第5条は尖閣諸島も該当するという昨年4月のオバマ大統領の確約も、その流れにあるものだ。
日米が共同作戦を行う範囲が焦点に
―― ガイドラインを変えることで期待される日本の役割とは?
日本は、国家安全保障戦略を遂行するにあたり、優先順位を決めている。まずは沿岸警備隊による法律執行だ。
既存の1997年度防衛協力ガイドラインによると、日米安全保障協力活動は、非戦闘時の「日本周辺地域」での状況 (SIASJ) における後方支援に制限されていた。SIASJが韓国での偶発事件を指していることは良く知られていることだ。そのため、2001年に始まったアフガニスタンでの米国主導の多国籍軍に対して日本が後方支援するためには、特別措置法を国会が承認する必要があった。
新しい指針にSIASJをそのまま使用するか否かについては現在検討中で、それが将来の安全保障協力を形作る重要な点だ。確かに、韓国で偶発事件が発生した場合、1997年度ガイドラインの下、米軍は日本の指定基地と後方支援協力にアクセス可能だった。しかし現実問題として、韓国の政治主導者たちは、間違いないほど明らかに、韓国の偶発事件に対して、日本の「地上軍」が支援することは歓迎しない。
日本が集団的自衛権を行使できる将来の事件に関して、どのように規定するか。「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(座長・柳井俊二元駐米大使)」 による報告書に概要は記載されている。自由民主党と公明党からなる連立与党は、現在、どのような法律にするか議論しているところであり、今国会で決着が付くだろう。
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