日本の「サービス業の生産性」が下がり続けるワケ 質が高いのに生産性は米国の約半分のなぜ

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では、サービス業はどうでしょうか? 2017年における日本のサービス業の労働生産性は、アメリカの約半分で、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアより約27~35%低くなっています。製造業とは異なり、20年前の1997年の数字と比べると、日本と欧米諸国間の労働生産性格差が拡大していることがわかります。例えば、日本のサービス業の労働生産性を100とした場合の1997年におけるアメリカの労働生産性は174.5ですが、2017年は205.4となっています。

日本のサービス業の労働生産性がアメリカよりも低いと聞くと、遠和感を覚える方がいるかもしれません。アメリカのみならず、海外に旅行したり、住んだりしたことがある方は、日本のサービスの質が世界のなかでいかに優れているかを、肌身で感じられているのではないかと思います。

例えば、日本では電車が定刻どおり、寸分の狂いもなく正確に来ますが、そんな国は他にほとんどありません。私がかつて住んでいたアメリカの首都ワシントンD.Cのメトロ(地下鉄)には、そもそも時刻表がありませんでした。

また、日本のレストランやホテルでは、どこでも従業員が笑顔で両手を前に重ねて深々と頭を下げるのは日常風景ですが、海外であんな質の高いサービスを受けたければ、最高級のレストランやホテルに行かなくてはいけません。「日本の常識、世界の非常識」と言われることがありますが、日本と海外のサービスの質をうまく描写していると思われます。

日本とアメリカ、サービス業の差はどれくらい?

実際に、日本とアメリカでサービス業の質はどれくらい違うのでしょうか? 下の図はアメリカ滞在経験のある日本人、また、日本滞在経験のあるアメリカ人を対象に、28の対人サービス業分野について、日米のサービス産業の品質の差に相当する価格比(日米の各サービスへの支払い意思額の比)を質問したアンケート結果を示したものです(出所:深尾京司、池内健太、滝澤美帆(2018)「質を調整した日米サービス産業の労働生産性水準比較」日本生産性本部、生産性レポートVol.6)。

ここから、米国滞在経験のある日本人は、宅配便やタクシー、コンビニなどの分野で、日本のサービスを享受するために、アメリカでの同種のサービス価格に比べて15〜20%程度、高い金額を支払ってもいいと回答していることがわかります。さらに、ホテルやレストランでも1割程度、日本はアメリカより品質が高いと認識されています。

このようにアンケート調査からも日本のサービスの品質は、アメリカよりも高くなっていることがわかります。では、サービスの質を考慮した場合、日本とアメリカの労働生産性はどの程度異なるのでしょうか?

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