大学講師が介護ではまった「年収200万円」の沼 ヘルパー代は払えず、授業の準備もままならない

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「 今、自分の月収が11万円で、母が受け取る遺族年金と国民年金が16万円。世帯の月収は約27万円です。

月々の生活費は、水道、ガス、光熱費で2万〜3万円、家の固定資産税が2万円、 健康保険料が2万円。食費は3万〜5万円かかります。母の医療費や通院の交通費もバカにならない。ここ数年、引き落としの残高が足りず、年金保険料と住民税を払えていない。住民税を払ってしまうと家計は赤字になってしまいます」

親の介護で、低収入になる人が増える

非正規雇用で独身の子供が、親の介護を負担することでさらに収入が減ってしまう。松田さんのようなケースが 「今後増えていくだろう」と小林さんは指摘する。

「松田さんの少し後の就職氷河期世代に、同じような状況に陥りそうな人が大勢いると思います。就職氷河期世代は非正規雇用が多く、未婚率が高かったり、収入的に自立することができず親と同居している方がすごく多いのです。そういう方がこれから親の介護を担った時に困難を抱える未来を示唆していると思います」

さらに、介護をしていると転職がしづらくなってしまう。

「家で親を看ていなければいけない時間が多いので、少し離れた場所にいい仕事があっても勤めることができない。できる仕事が限られてしまうのです」

介護による親子の共倒れを防ぐためには、「介護施設や障害者支援施設を保育所並みに使いやすくする必要がある」と小林さんはいう。そのためには国民の意思表示が欠かせないが、世間の関心はまだ高いとは言えない。それは多くの人が「介護なんてまだ先」「自分が障害者になることが想像ができない」と思っているからではないだろうか。

「しかしいざ自分が脳出血を起こして介護が必要になったり、障害を負うことになった時にはきっと『助けて!』と思うようになると思います。政治家も、自分の身内が要介護になったり、急病で入院したことで、医療制度や介護制度の矛盾に初めて気づく人が多いのです。本当に困ってしまってからでは遅いのです。多くの人が『いつ自分が当事者になってもおかしくない』と、リスクとして捉えるこが大切だと思います」

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