大学講師が介護ではまった「年収200万円」の沼 ヘルパー代は払えず、授業の準備もままならない
日本の平均年収443万円(2021年)では、一昔前のような中流家庭の暮らしを送ることは難しい。必死に節約し、外食や行楽をできるだけ我慢しても生活はギリギリ。老後の貯蓄もほとんどできない。
さらに、子育てや介護などによって自由に働くことができず「平均年収以下」に陥ってしまうケースも後を絶たない。『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』の著者・小林美希さんは、同書の執筆にあたり、月収9万円で生活するシングルマザーや、知的障害のある子供がいるため出勤がままならず解雇され、500万円の借金を抱えて暮らす夫婦などを取材している。その中でも小林さんの印象に残ったのは、認知症の母親を介護をする松田彰人さん(仮名)だ。
年収200万円の大学講師が嘆く、介護地獄
松田さんは埼玉県在住の52歳。年収は200万円で大学の非常勤講師をしている(以下、太字部分は著書からの抜粋)。
「研究者を目指して大学院でも学んだのに、ずっと大学の非常勤講師のまま。年収は200万円程度で、典型的な『高学歴ワーキングプア』です。だから、大学院時代に借りた奨学金の返済がまだ250万円も残っています」
もともと年収は低かったが、さらに50万〜70万円程年収が減ってしまいそうだという。その原因は、認知症になった母親の介護だ。母親を見なければいけないので、以前のように外出できなくなってしまった。
「自分が仕事で外出するときは不安だと思って、ホームヘルパーを頼もうとしたら、同居している家族がいると公的サービスとしてホームヘルパーを使えないと言われてしまって、全額自己負担だと。
それで自分でホームヘルパーを頼んだら、月に3万〜5万円もかかってしまって。 ただでさえ奨学金の返済も滞っているのに、そんな金額を出し続けられない」
そのあと松田さんの母親が要介護1となったことでデイサービスが利用できるようになった。「やっと生活が立て直せる」と思った矢先にコロナが流行り、外出できなくなったことで母親の認知症が悪化。週に3日のデイサービスでは負担はほとんど減らず、研究活動や授業の準備をすることもままならなくなった。
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