平均年収で「毎月10万円赤字」じっとしている日々 団塊世代が気づいた「子が貧しく孫ができない」
日本の平均年収443万円(2021年時点)は約30年前の1989年の平均年収452.1万円から減少。一方で物価は上昇、社会保険料が引き上げられているので、実際に使える金額は減っている。
『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』の著者・小林美希さんは、「平均年収」で暮らす多数の「中間層」が、経済的な困窮から生まれるさまざまな問題を追いかけてきた。
お金を使わないよう、じっとしているのが1番
「平均年収」で暮らす今の日本人の典型例として、小林さんは著書に登場する須藤慎太郎さん(仮名)を挙げる。須藤さんは神奈川県在住の48歳会社員、年収520万円で専業主婦の妻と娘1人を養っている(以下、太字は著書からの抜粋)。
「保育会社に転職したら年収は520万円に減りました。手取りだと400万円。妻は専業主婦なので僕だけの収入だから、生活はかなり苦しくなりました。月収だと手取り32万円ですが、毎月、貯金を取り崩してなんとかしています。」
賃貸マンションに暮らし、家の購入はとても考えられない。家計は毎月10万円の赤字。彼が自由に使えるのは月1万5000円の小遣いのみだ。
「僕のお小遣いは、昼飯代も込みで月1万5000円です。基本、弁当です。昼飯を外で食べたとしても500円で収めないと。(中略)1万5000円ですから、何もしちゃダメなんです。 何かしたら使わないといけない。じっとしていないと」
この言葉は「平均年収」の人々の現実を表すものとして「非常に印象的だった」と小林さんはいう。
「多くの人が、実は同じように感じているのではないでしょうか。他の取材対象者からも水族館の入場料が高い、ファミレスにも行けないとよく聞きました」
須藤さんは自らの生活をこう嘆いている。
「赤字は毎月10万円。これって、一般的な家庭像で夫が大黒柱で妻が扶養の範囲内で働くとちょうどいい、というのと合致しますよね。なんだか、そういう典型的な夫婦のモデルケースになれないって、人生の脱落者という扱いなのかな、って思っちゃうんです。
夫がサラリーマンで妻が社会保険料を支払わなくていいように月8万円ほどに調整して働く。それが中流家庭なんでしょう。だから、うちは中流以下。でも、そもそも 中流って何なのでしょうね」
小林さんは、「30年前なら年齢を重ねるにつれ収入が上がったため会社員と専業主婦と子供がいるというのは、ひとつのモデルケースだった」という。しかし、もはや今はそれが当てはまらなくなったことを須藤さんのケースは示している。
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