22年映画興収「100億超え4本」も喜べない複雑事情 ヒット格差が大きく、ディズニーも苦戦した

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シリーズ続編が前作より興収が下がるのはいまにはじまったことではない。もちろん上がる作品もあるが、下がる作品のほうが圧倒的に多い。だが、今年は一部を除きその落ち幅が従来以上に大きくなった。

その流れに抗い、圧倒的な作品力で観客を惹きつけたのが『トップガン マーヴェリック』や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』だ。とくに前者の爆発的ヒットばかりが今年の洋画シーンの景気のいい話題として際立っているが、そのほか多くの続編が、シリーズのタイトルの大きさに対して思うように興収を上げられない苦境にさらされているのが実情だ。

ディズニープラスへの配信シフト

それでも先に挙げたシリーズ続編は健闘しているほうだ。さらに厳しい結果になっているのがディズニー作品。作品数はあるものの、2022年は『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』(21.6億円)が同社の興収トップとなり、期待されていた『バズ・ライトイヤー』(12.2億円)や『ソー:ラブ&サンダー』(13.5億円)を含め、15億円を超えるヒットがほぼないまま終わりそうだ。

かつてディズニーと言えば、毎年50億円から70億円のヒットを連発し、100億円を超える作品も少なくなかった。100億円超えが3本、60億円台が2本となった2019年が象徴的で、近年の洋画市場はディズニーが大きく牽引していた。そんな洋画の雄から大ヒットが生まれなくなっている。

その背景には、ディズニープラスへの配信シフトがあるだろう。コロナ禍でディズニーは新作の配信独占公開や劇場と配信の同時公開に踏み切るなど、試行錯誤を繰り返してきた。

現状では、基本的に劇場公開から配信まで45日間を設ける「45日ルール」がデフォルトになっているが、配信でドラマや映画を見ることに慣れたファミリー層や若年層のディズニーファンがそちらに移っていることは想像に難くない。

ただ、ディズニーは劇場公開から生まれる社会的ヒットがコンテンツ価値を高める重要性を理解している。ディズニープラス(配信)を主軸に構える姿勢はコロナ以降変わっていないが、劇場と配信の両方をどううまく事業として成り立たせ、利益を最大化していくかがこれからの大きな課題だろう。

今年はディズニー以外の洋画配給は健闘した。日本映画市場の規模として見た場合の洋画復興は、ひとえにディズニーにかかっている。

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