トレンドマイクロ、世界首位陥落で迎える正念場 サイバーセキュリティー業界で相次ぐ再編

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躍進で注目を集めるのが、クラウドストライク。同社は、マカフィーの技術部門のトップだったジョージ・カーツ氏が2011年に創業し、2019年にアメリカで上場した新興企業だ。過去5年の年間平均成長率が約100%という驚異的な成長を遂げる。

急成長の原動力となったのが強力なEDRを搭載したセキュリティープラットフォームの「ファルコン」のヒットだ。

従来はウイルス対策とEDRで別々の製品を導入する必要があったが、ファルコンの場合は、単一の軽量なソフトを導入するだけで対応が可能だ。また顧客がサーバーを自社などに設置して管理するオンプレミスではなく、完全にクラウドをベースとしている点にも特徴がある。

クラウドストライクの創業者であるジョージ・カーツCEO。モータースポーツ好きとしても知られる(写真:ロイター/アフロ)

顧客のパソコンやサーバーなどエンドポイントで起きているさまざまな情報を、クラウドストライクの共通の解析基盤に送信して、クラウド上で解析を行うため、エンドポイントの負荷や管理の手間が少なくて済む、といったメリットが挙げられる。

近年はサイバー攻撃の高度化にあわせて、エンドポイント以外のクラウド環境やID保護などさまざまな領域にサービスを拡大している。

セキュリティーのコンサルや製品の導入支援を行う、ある日系のITサービス企業はこのファルコンを積極的に顧客に販売している。同社の首脳は「5年ほど前、複数の製品をテストしたところ、ファルコンは脅威の検知、ブロックや隔離の精度で他社を大きく上まわった」と説明する。

こうした製品の先進性や機能の高さが好評を集め、顧客層が一気に急拡大。加えて、新たなサービスの追加で単価も上昇しており、エンドポイントの領域で一気に世界の首位に躍り出た格好だ。

日本では米サイバーリーズンが台頭

地殻変動は世界の市場だけではなく、日本でも起きている。法人向けのエンドポイントセキュリティー市場では依然としてトレンドマイクロがトップシェアであるものの、EDRではアメリカの新興企業、サイバーリーズンが首位となっている。

サイバーリーズンは日本市場での成功を武器に急激に存在感を増しつつある(写真:サイバーリーズン)

同社はイスラエルの元軍人で情報専門部隊出身のリオ・ディヴ氏らが創業。ソフトバンクグループのビジョンファンドが出資していることで知られる。

「当社のEDRは攻撃をタイムラインで時系列順に並べたり、相関解析をするなど、全体像を把握しやすい点に特徴がある。MDRも日本国内に拠点を持つほか、NSA(アメリカ国家安全保障局)やイスラエル国防省の出身者など、軍事レベルのスキルを持ったセキュリティーアナリストがいる。そういった使い勝手の良さが評価されている」(サイバーリーズン・ジャパンの菊川悠一・プロダクトマーケティングマネージャー)

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