西九州新幹線がもたらす中長期的な人の流れの変化や効果・影響はまだ見通しがたい。それでも、開業が引き金となった沿線地域の変容は確実に、しかも大規模に進んでいる。
最もインパクトが大きいのは長崎駅周辺の変貌だ。西九州新幹線の建設に併せて長崎駅のホームと駅舎が150mほど西へ移設された。さらに長崎本線約2.4kmが高架化され、新幹線と在来線が並行してホームへ進入する形になった。
駅とホームの跡地にはJR九州が新たな駅ビルを建設中だ。外資系ホテルやオフィスが入居、2023年秋の全面オープンを目指す。駅の高架下には飲食・物販施設「長崎街道かもめ市場」がオープン済みで、既存の駅ビル・アミュプラザ長崎と長崎街道かもめ市場、新駅ビルが新たな商業エリアを構成する。
主要施設が駅前に集中
長崎駅の南側には2018年、長崎県庁と長崎県警本部が、出島に近い同市江戸町から移転してきた。また、駅西口には2021年11月、「ヒルトン長崎」も入居するイベント・コンベンション施設「出島メッセ長崎」が完成している。
このほか、長崎駅から約1km北の幸町地区に、J2のV・ファーレン長崎の専用スタジアムを核とした施設群を建設する「長崎スタジアムシティプロジェクト」も進行中だ。
長崎市中心部のベルナード観光通りや観光スポットはコロナ禍前を思わせる人でにぎわい、外国人観光客の姿も目立つ。ただ、北陸新幹線の長野、富山、金沢などの事例をみても、駅前の商業機能や都市機能の充実は、既存の中心市街地の行方に大きく影響する。
筆者がここ数年、取り組んでいる「観光の組織化」に関する調査のヒアリングで、長崎商工会議所の松永安市専務理事は「西九州新幹線はあくまでも暫定開業の段階。地元にとって、新幹線開業は『100年に一度』のまちの造り替えの契機という意味で大きな意義を持つ。まちなかへの回遊性を高め、にぎわい創出につなげていきたい」と語っていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら