日本人が「リノベーション」しかできない深刻問題 問題解決の前に課題を「発見する能力」が必要

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だから何も基準を設けず、自由に写真を送ってもらうことにしたのです。すると、数千枚もの写真が集まりました。

理想的な休憩は温泉でくつろいでいたり、横になってのんびりしていたり。嫌いな休憩は、授業の合間の休み時間や、仕事中の短い休憩時間の写真が目立ちました。

そこから、私は日本人にとっての理想的な休憩は「ストレスからの解放」なのだと思いました。これが、顧客が気づいていない問題になります。

中高生のストレスといえば、受験や恋愛、部活動や友人関係など。そうして、キットカットの受験生応援キャンペーンが生まれました。

ちょうどこの問題を考えている最中に、九州地区では毎年1月と2月にキットカットがよく売れるという情報が舞い込みました。九州弁の「きっと勝っとぉ」がキットカットに似ているので、ゲン担ぎに買っていく人が多かったのです。

そこで、「キット、サクラサクよ。」というキーコピーと共に、キャンペーンを展開しました。

まず、各地のホテルと組んで受験生が試験に向かう日に、キットカットと一緒に「キット、サクラサクよ。」のコピーが書かれたポストカードを渡してもらいました。

さらに東京都内の電車を「キット、サクラサクよトレイン」と称して、満開の桜の絵とキットカットのロゴをあしらったラッピングにして走らせました。加えて、車内の中吊り広告は駅長さん、親御さん、予備校の先生などの応援メッセージで埋め尽くしたのです。

緊張とプレッシャーに押しつぶされそうになりながら試験に向かう受験生は、きっと励まされたでしょう。これも世界をよりよくする問題発見だったと今では思います。

このような大々的なキャンペーンにより、「キットカットは受験生のお守り」というイメージが定着して、受験シーズンには爆発的に売れる商品となりました。

これが、私が考えるマーケティングです。イノベーションは無から生まれるのではなく、問題からすくい上げるものなのです。

問題発見=イノベーション

今は、画期的なイノベーションに結びつく問題を見つけづらい時代だといわれています。

世の中の生活水準が上がるにつれ、人々の不満や不便さは次々と解消されてきました。だから問題を発見しづらいとの説がありますが、本当にそうでしょうか?

どんなに豊かな世の中になっても、人々の不満やニーズはゼロになることはありません。

例えば、アメリカではニューヨークのような都会だとすぐにタクシーを拾えますが、郊外に行くと交通手段がマイカーだけになります。

日本のように全国津々浦々まで電車やバスが走っていませんし、郊外でタクシーは拾えません。レンタカーを借りるしか手段はなかったのですが、その問題をUberが解決しました。

Uber創業者のトラビス・カラニック氏とギャレット・キャンプ氏は、旅先でタクシーを拾うのに苦労した経験から、このサービスを思いついたといわれています。

普通なら「新しいタクシー会社をつくろう」と考えるかもしれません。しかし、広大なアメリカの全域をカバーするようなタクシー会社をつくるのはムリです。

そこで、アメリカ人の主な交通手段がマイカーである特徴を活かして、そのマイカーを利用するシステムをつくったわけです。

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