ファミマが仕掛ける「ココストア買収」の意味 コンビニ大再編の火ぶたは切って落とされた

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次に、同社は健康をテーマに集客をしようとしたが、ローソンも同じく「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」に変え、当アピールポイントも明確な差別化ができなくなったことがある。弁当には保存料を使わないと謳ったが、優位性がなくなった。各社が健康やシニアにシフトしようとする中、「当社は、健康にはいいが、見た目と味がいまひとつ伴わない」とトップみずから認めるほどだった(雑誌「コンビニ」2012年7月号)。

三つ目に、酒類の販売自由化によって、かつての優位性が薄らいだことだ。ココストアの客層は、元酒屋という性質上、20代から30代の男性客が圧倒的だったが、酒類も販売するコンビニは今ではどこにでもある。セブン-イレブンは今やプライベートブランドのビールやワインも用意するほどだ。

先駆者が巨大資本に飲み込まれる歴史的事件

一方で、ココストアは意外なほど革新的な取り組みをしていた企業でもある。コンビニの先駆者であり、卸企業がコンビニを始めたケースはもちろん初の例。小売と流通・メーカーが一丸となった商品開発の嚆矢ともなり、店舗調理などの差別化施策を講じた。そして、健康をテーマに訴求しようとした。考えてみるに、これらは競合他社がなぞっている現状そのものではないか。

今ではローソンにおける三菱商事やファミマにおける伊藤忠商事のように、大手商社が他コンビニチェーンの大株主となっている。

つまりファミマによるココストアの買収が実現すれば、コンビニの先駆者が、巨大資本の前に力を失い飲み込まれるという、歴史的事件だと解釈すべきなのである。または、小規模コンビニチェーンが、これ以降、再編劇に巻き込まれる号砲としての意味合いがある。

現在の闘いはコンビニ同士のそればかりではない。スーパーマーケットやドラッグストア、GMS(総合スーパー)、さらにはネット通販大手もいる。人口減少社会はかならずしも小売店の売り上げ減にはつながらない。ただ、全国5万店を超え、10兆円市場となったコンビニ業界は安穏とはしていない。誰もが強者と勝者を目指す中、業界再編はますます激しさを増していくかもしれない。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。著書も多数。

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