実は、精神科医の仕事とカウンセラーの仕事を混同している人は少なくないようで、私たち医師も戸惑うことがあります。
基本的に精神疾患の治療をする専門家が精神科医であり、薬物療法や精神療法などを行います。診察にかかるのは、長くても10分、通常は5、6分です。
一方、カウンセラーは、カウンセリングや心理テストを行います。臨床心理士や公認心理師などが、1回につき30分〜1時間、長い時間をかけて患者さんの話を聞いてくれます。時と場合によりますが、あえて具体的に何かをするよう指示したりはせず、話をよく聞いてくれて悩みの原因を探ったり、考え方を整理する手助けをしたりしてくれることがあります。医師とは違い、薬物などを使った治療行為は行いません。
このように、両者には明確な違いがあるのです。しかし、世間は精神科医に対して、時間をかけて患者さんから話を聞き、悩みを取り除いてくれる、いわゆるカウンセラーのような役割を期待するようです。
まずはカウンセラーを探しを優先したほうがいい場合も
実際、患者さんが「たった10分で終わってしまったじゃないか!」と怒ったり、口コミサイトに同様のことを書かれたりするのですが、それは誤解です。
もし、患者さんの転院したい理由が「診察時間が短い。話を聞いてくれない」であったとしても、どこの病院にかかろうと状況はあまり変わらないのです。そもそも主治医を変えれば、投薬治療を含めてすべて見直し、またイチから今の病状に至った経緯などを伝え直すことになり、それなりにエネルギーのいることです。
じっくり話を聞いてほしいなら、医師を変えるより、いいカウンセラーを探したほうが、患者さんの求めるものが早く得られます。
カウンセリングの費用は保険適用外でお金もかかりますが、頼れる先が主治医とカウンセラーの2人になるという点は、患者さんにもプラスになるでしょう。
大きい病院であれば、カウンセラーが在籍していることもあります。いなくても、精神保健福祉士がいれば、紹介してもらえる可能性があります。精神保健福祉士とは、精神疾患を抱える人たちが安心して生活できるよう支援してくれる専門家。自立支援医療制度や障害者手帳など、精神疾患のある人が利用できる制度について紹介してくれたり、申請の手助けをしてくれたりします。
ただ、小規模なクリニックにはいないことも多く、こうした専門家のサポートが受けられるという点は大きい病院のメリットです。入院環境が整っている病院には、基本的に精神保健福祉士が在籍していることが多いので、病院選びの1つの指針にしてもいいかもしれません。
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