中国「iPhone工場」、従業員が"大量離職"の大混乱 工場周辺に労働者が次々現れ、SNSでも大騒ぎに

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鴻海はアップルからiPhoneの生産の約70%を受託し、その60%を鄭州工場で生産している。従業員の大量離脱で同工場は10万人の欠員が出たとされ、同社は11月上旬、10~12月の業績見通しを「下方修正する」と明らかにした。

iPhoneの生産を委託しているアップルも、かすり傷では済まされない状況になっている。アップルは11月6日、「顧客は新商品を受け取るまでの時間が長くなりそうだ」と声明を出し、iPhone14とiPhone14 Pro Maxの出荷台数が、想定を下回ると発表した。

鴻海は生産回復に向けて、従業員を大量募集すると同時に、10月10日から11月5日に離職した元従業員が職場復帰する際には、500元(約1万円)のボーナスを支給するとの求人広告を出した。地方政府も「一つの集落から一人鴻海に行くよう」通達を出すなど、地域総出で人をかき集めている。

出勤を続ける従業員には1日あたり400元(約8000円)の出勤手当を支給、11月にフル出勤したら給料以外に受け取れる手当は1万5000元(約30万円)に達し、大都市のITエンジニア並みの待遇になっている。

現場のマネジメントは大混乱、真偽不明の噂も

破格の給料を提示したこともあり、鄭州工場の10万人求人に対しそれ以上の応募が殺到した。しかし感染対策、離職者への対応、新規採用者のトレーニングなどで現場のマネジメントは混乱を極めており、ゼロコロナ政策下の封鎖環境で、真偽不明の噂も大量に飛び交う。

11月22~23日に起きた当局と従業員の衝突は、新規就業者への手当を巡る行き違いが発端で、鴻海は「システム上の入力ミス」によるものだと謝罪し、新規就業者が離職する際にも1万元(約20万円)の補償金支給を決めた。

ロイター通信の報道によると、この施策で2万人がごっそり離職したという。工場側がコスト度外視で人手を確保しなければならないことが従業員有利の構図を生み、混乱の長期化につながっている。

10月下旬時点で、鴻海は11月中に生産を完全回復する目標を掲げていた。ロイター通信の報道によると、鴻海は当時、11月のiPhone生産台数が最大30%減少すると予測していたが、月内のフル稼働は絶望的で、さらなる減少は避けられない。

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