ルクセンブルク「公共交通無料」はどれだけ便利? 乗り物も個性的、風光明媚な車窓が満喫できる

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中央駅前から再びトラムに乗る。車両の外観はシルバーで、昼間はクールな装いだが、各扉の窓をフィルムで色分けし、座席の背もたれもブルーに光るので、夜は一転してカラフルになる。海外での夜間の外出は不安を感じる人もいるだろうが、こうした演出のおかげもあり、リラックスした気分で過ごすことができた。

夜はカラフルなトラム車両(撮影:森口将之)

翌日は飛行機でパリへ戻る。ルクセンブルク・フィンデル空港までは、中央駅前から直行の路線バスが出ているが、筆者はトラムで終点のルクスエクスポ(Luxexpo)電停に行き、そこからバスを使うことにした。

前日に立ち寄ったキルシュベルク電停からルクスエクスポ方面は初乗車となる。この地域は新都心と呼ばれており、欧州議会事務局、EUの会議も行われる欧州コンベンションセンターをはじめ、展示場、大学などがあり、旧市街とは異なる、ルクセンブルクのもうひとつの顔となっている。

空港までももちろん無料

終点のルクスエクスポにはバスターミナルのほか、パークアンドライドの駐車場も確保されている。バスはルクセンブルク市の外側に行く路線もあり、市内を走る市営バス(AVL)のほか、CFLなど複数の交通事業者が乗り入れており、一部は隣国まで延びている。これらの路線は有料となるが、空港は国内なのでもちろん無料だ。

結果的に中央駅から空港まで、移動には1ユーロも使わなかった。もちろん以前も1日4ユーロで済んだので、金銭的な負担はさほどではないが、無料ということで気持ちのうえでの自由度が上がったことを実感した。

民間事業者が運賃収入を原資としている日本で、この方式を導入するのは不可能だろう。しかしながら運営の手法を変えれば、公共交通は無料にできることを、ルクセンブルクは証明している。

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、地域交通が大きな打撃を受けている今だからこそ、欧米流の公共交通の運営手法への転換を、真剣に議論する時期に来ているのではないかと思った。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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