ルクセンブルク「公共交通無料」はどれだけ便利? 乗り物も個性的、風光明媚な車窓が満喫できる
TGVを降り、まず駅構内をチェックした。高い時計台を持つ駅舎の中は、改札口がないのは欧州の鉄道では多いので驚かないが、出札口もない。出口へ向かって右側に、板で覆われている壁があった。以前はここに出札口があったのかもしれない。
券売機はある。しかし操作してみると、周辺国へ行く場合、および1等に乗る場合は有料となるが、国内の2等を選ぶと「フリー」と表示された。国鉄に関しては無料であることが確認できた。
駅舎を出ると、目の前にトラムの停留場やバスの停留所がある。トラムは2017年に開業した比較的新しい交通機関で、2020年に中央駅まで延伸した。駅に寄り添うように乗り場があるのは便利かつ快適で、公共交通利用を促す効果もあると感じる。
電気機関車が押す客車列車
中央駅に戻り、止まっていた客車列車に乗る。日本国内を含めて、しばらく客車に乗っていなかったためもある。電気機関車が最後尾から推進するプッシュプル方式だ。
列車はアルゼット川が作り出した渓谷に沿って北上する。路盤はドイツやフランスの幹線並みにしっかりしており、モーターやエンジンを積まない客車ならではの静かかつ滑らかな乗り心地が堪能できた。
20kmほど北にあるメルシュ(Mersch)という駅で降りる。もちろん途中下車も自由だ。以前使われていた駅舎は閉鎖され、バスターミナルに隣接した階段がエントランスになっており、乗車券の券売機などは見当たらなかった。
帰りは各駅停車の電車に乗り、中央駅のひとつ手前のパッフェンタル・キルシュベルク(Pfaffenthal-Kirchberg)駅で降りる。駅名は渓谷と丘の上の地域の名前をつなげたもので、ルクセンブルク市内を走るトラムとの接続のために最近作られた。
鉄道の駅はアルゼット川が刻んだ崖の中腹にあり、上方で道路とともに川をまたぐトラムのキルシュベルク電停と高低差がある。そのため専用のケーブルカーで往復するという、ぜいたくな作りになっている。運賃収入はないものの、インフラ投資は十分に行われていることがわかる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら