精神科病院が「東急8500系」を購入した納得の理由 必要資金8000万円、調達にはクラファンも活用

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8500系の設置予定地を見せてもらった。病棟とデイケア棟の間で、現在は畑になっている土地。道路に並行に置き、先頭は病棟側、バス通りからチラリ見えて「電車だ」と解る向きになる。

設置後は誰でも見学でき、日中は誰でも車内に入れる。心無い鉄道ファンのいたずらも対策する必要があるから、無料開放とはいえ、見守り役を置き「話せる場所」として活用する。イベントスペースとして認知症セミナーを開催するほか、保健所の許可を得られれば医療の場にも使いたいという。小児科もあることだし、こども向け予防接種会場もいいと思う。活用法はこれから詰めていく。

車内に入る方法は未定。乗降扉を自動ドアでと考えたけれど、追加費用がかかる。プラットホーム設置も課題のひとつ。今後も何かとお金がかかりそうだ。支援が増えればやりたい。そのためにオープンセレモニーの参加など体験型の返礼品追加を検討中とのこと。

公開予定日は2023年8月

必要資金は概ね8000万円。クラウドファンディングの目標金額は2900万円。目標に達すればセカンドゴールもあるとはいえ、全額に満たない。それでも精神科病院に電車を置きたい。その理由を知れば「東急沿線ではない」という不満はどうでもいい。電車の保存が精神医療のターニングポイントになるとしたら、鉄道ファンとしてうれしいことだ。

12月にクラウドファンディングを締め切ったあと、東急との引き渡し、輸送経路に関する警察の許可などを得て、6月ごろから地盤改良工事を実施。公開予定日は2023年8月を予定している。ハチゴーにちなんで8月5日だとカッコいい。筆者も支援者のひとりとして、これからも応援していきたい。

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杉山 淳一 フリーライター

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すぎやま じゅんいち / Junichi Sugiyama

東京都生まれ。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社でパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当したのち、1996年にフリーライターとなる。IT、PCゲーム、Eスポーツ、フリーウェア、ゲームアプリなどの分野を渡り歩き、現在は鉄道分野を主に執筆。鉄道趣味歴40年超。全国の鉄道路線完乗を目指してコツコツと旅を重ねている。鉄旅オブザイヤー選考委員。基本的に、列車に乗ってぼーっとしているオッサンでございます。

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