水族館の超人気者「イルカ」たちの過酷すぎる生涯 イルカ飼育大国・日本に住む私たちが知るべき現実
背景にあるのは、鯨類は保護の対象であり、捕獲や飼育をするべきではないとの認識です。
イルカに限ったことではありません。人間の娯楽や興味本位のために野生どうぶつを捕獲し、自然とは程遠い環境に閉じ込めて飼育することは不適切であるとの考えが、世界中でじわじわ広まっています。
どうぶつ展示施設や、国レベルで、時代に沿った社会的責任を果たすための取り組みが始まっているのです。そのひとつとして目下、注目されているのがイルカです。
実は日本人とイルカには大変深い関係があります。日本は世界でも有数の水族館大国で、多くの水族館がイルカショーを集客の目玉にしているからです。
現在、日本では約500頭のイルカが水族館の展示用として、ショーなどに利用されています。人口比に換算すると、イルカの飼育数上位国の中でも非常に多い数字です(「behind the smile - dolphins in entertainment report」より)。
詳しくは後述しますが、日本はいまだに野生のイルカの捕獲を行い、かつ世界中に輸出するビジネスを行う珍しい国でもあります。
水族館のイルカは安全で幸せなのか?
なぜ世界的に、イルカなど鯨類の水族館での飼育が問題とされているのでしょうか。
私が今年初めに寄稿した記事「『水族館の人気者』イルカが迎える恐ろしい結末」(1月28日配信)は大きな反響がありましたが、反対意見もいただきました。そのひとつが、「野生の生活に比べて安全で餌がもらえ、病気の治療も受けられる水族館のイルカは幸せではないか」というものです。
イルカの種類にもよるのですが、たとえばアメリカ商務省下の組織NOAA Fisheriesは、野生のハンドウイルカは少なくとも40年、メスや長寿のオスで60年以上生きることもあるとしています。日本における数少ないイルカ研究者である粕谷俊雄氏は著書『イルカ概論』の中で寿命について、ハンドウイルカの場合、観察値で最高齢45歳、予測値で67歳としています。
一方、飼育環境下にあるイルカはどうでしょうか。ある日本の水族館の元館長は、「寿命は平均で14年くらい」と証言します。また別の水族館の責任者は「平均15~18歳」とやはり十数年と語ります。
鯨類保全チャリティWhale and Dolphin Conservation (WDC)は、水族館で1年以上生きたイルカの平均生存期間は12年9カ月8日としています。このように十数年というのが関係者から見られる数字です。
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