水族館の超人気者「イルカ」たちの過酷すぎる生涯 イルカ飼育大国・日本に住む私たちが知るべき現実

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イルカは、太地町長が理事長を務める「太地町開発公社」などを通じて売られますが、開発公社の売り上げの8割が「生体販売」で占められています(和歌山県に情報開示請求して得た資料による)。イルカ猟は日本の伝統文化といわれることもありますが、ビジネスであることがよくわかります。

財務省の貿易統計データによると、鯨類の生体販売として2019年には中国とベトナムに157頭、8億8400万円の取引がされた記録もあります。それを裏付けるように、私が代表を務める団体が行った調査では、太地町には2022年3月11日時点で269頭ものイルカと小型のクジラが飼育され、小さなイケスで「出荷待ち」にされていました。

太地町森浦湾では、多数のイルカが「在庫」としてイケスで飼育されている(@Life Investigation Agency/Dolphin Project)

生き残ったイルカを待ち受ける”試練”

生き残ったイルカにも、試練が待ち受けます。太地町のイケスにうつされ、人間のために芸をして生きるための厳しい訓練が施されるのです。

よく行われるのが、「死んだ魚を食べる訓練」です。

野生のイルカは生きた魚を食べますが、捕獲されると飼育員が与える冷凍の魚やイカの切り身を与えられます。しかし、死んだ魚を食べたことがないため、捕獲当初はなかなか食べません。そこで、口を手でこじ開けて喉の奥に入れるなどして慣れさせたりします。

ドルフィントレーナーにより喉の奥に手を入れられるハンドウイルカ(@Life Investigation Agency/Dolphin Project)

冷凍の魚には別の問題もあります。生きた魚に比べて水分量が少なく、水族館のイルカは脱水しやすいことがあるのです。その対策のため、飼育されているイルカが胃にホースで直接水を流し入れられたりします。野生で生活していれば考えられないことです。

ある水族館の元担当者は「特に冷凍魚は血液などに含まれる栄養も流れてしまうので、補助的な成分も与えていた」と語っていました。

飼育されるイルカは水分不足に陥りやすく、ホースで胃に直接水分を注入されることも(@Life Investigation Agency/Dolphin Project)

そうして生活するイルカたちには、芸をしたら餌がもらえる、ということが教え込まれます。そのため水族館のイルカは、ドルフィントレーナーが来たら、ジャンプなどをしてアピールするようになります。

日頃、水族館でイルカを見る皆さんの目には、「大好きなトレーナーが来てイルカが喜んでいる」と映るかもしれません。しかし、イルカは餌を貰うために芸をしているのです。

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