中学受験に失敗「不登校」になった彼が選んだ道 「フリースクール」に通い始めて救われた

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当時の私からすれば、親から怒った口調で「塾に行ったらどうか」と言われれば、断るという選択肢はなく、都内でも有数の進学塾に通うことにしました。難関な私立の中高一貫校にどんどん児童を送り込んでいるような塾で、私も入塾した当初は一気に学力が向上しました。

塾の先生も、私の親に対して「この子は東大に行くような子どもですので、ぜひ応援してあげてほしい」と言っていました(あとで聞くと、それは入塾者全員へのうたい文句だったのですが)。

「塾」という場所で行われる教育は、一言で言えば「テストの点数を上げる」ことに特化したものです。

クラスみんなの基礎学力を向上させることを目的とした公教育とは、明らかに性格が違います。ですから、基礎学力が追いついていない段階でも、ある程度テクニックでテストの点数を上げることが可能なのです。私も、まさしくそのパターンに該当していました。

テストに対するテクニックが身につく勉強開始当初はみるみる成績が上がったのですが、しだいに基礎学力が追いつかなくなり、成績が停滞するようになりました。

私をさらに追いつめたのが塾の環境です。有数な進学塾だったその塾では、生徒をなぐったり罵声を浴びせたりするスパルタ教育を実践していました。同じまちがいを繰り返した児童を廊下に立たせたり、1日10時間以上も缶詰めになって勉強をさせる合宿などを行ったり、子どもにとってはとてもストレスフルな環境でした。

「私立の中学校に行けなかったら人生終了」と言われた

成績は停滞し、強いストレスを感じながら学習していた私は、しだいに心を病んでいきました。そして、そのストレスがついに爆発し、クレプトマニア(病的窃盗や、窃盗〔万引き〕をやめたくても自分の意思の力でやめられない精神疾患のこと)になってしまったのです。

万引きを繰り返していたのは、受験も近づいていた小学6年生のときですが、そこまでのストレスを感じ、異常行動を繰り返していても、だれも私の「異変」に気づきませんでした。

そんな精神状態で迎えた中学受験が、うまくいくはずがありません。結果は、第6志望まで受けた中学のすべてに落ちてしまうというさんざんたるものでした。

通っていた塾の先生からは、「私立の中学校に行けなかったら人生終了だよ」とまで言われていましたから、勉強に身が入っていなかったとはいえ、受験の失敗はほんとうにショックでした。人生を否定されたという屈辱感、「この先の人生どうなってしまうんだろう」という挫折感でいっぱいでした。

公立の中学校に進学したあとも、その挫折感と塾で身についてしまった学力差別による自己否定に苦しみました。

通っていた中学校でもいじめにあい、変な校則に反抗して中学校の先生と衝突したときも、「おれは負けたからここにいるんだ」と自分を責めてしまい、生きている実感を得るのがむずかしくなっていきました。実際に、中学校の先生にも「あなたは受験に失敗したからこの中学校にいるのよ」と言われたこともあり、「あの受験がなければ」と思い続ける日々でした。

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