バブル期を超える勢いも「不動産価格高騰」の正体 コロナウイルスが生み出した新たな需要の背景

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不動産価格が高騰する大きな要因は圧倒的な超低金利にあります。

住宅ローンは超低金利時代が続いており、2021年12月にはauじぶん銀行が変動金利を0.289%に引き下げました。この数値は過去最低値となっています。固定金利はこの数カ月で金利の引き上げがありましたが、上がったといっても1%前半ですから、いかに金利が低いかがわかります。

なかでも、パワーカップルといわれる夫婦の合計年収が1000万円を超えるようなサラリーマン世帯にとって、いまの不動産は買いやすい状況です。例えば、住宅ローンの変動金利が0.3~0.4%程度で1億円を借りた場合、35年返済であれば月約25万円。年収1500万円世帯であれば無理なく支払えます。1億円以上する都心のタワマンが価格上昇しても売れる理由に、超低金利の恩恵があるのです。

住宅ローン控除の存在も購買意欲をかき立てます。2022年度の税制改正により住宅ローン控除による控除率は1%から0.7%に引き下げられましたが、控除の期間は13年に延長となりました。低金利の今でこそ、金利負担以上の控除を受けることも可能となっているのです。

億単位のタワマンを求める人たち

億単位のタワマンを求める人たちが増えた背景には、コロナ禍で富裕層のお金の使い道が変わったことも挙げられます。コロナ禍で海外旅行を控えなければならない代わりに、不動産や絵画、車、時計などの有形資産が資金使途先になっています。なかでも、資産価値が高く、節税対策にもなるタワマンの需要は大きいといえます。

ここまで住宅に関する話を続けてきましたが、これを不動産ビジネスとして見た場合はどうでしょうか。

不動産ビジネスとは、開発で土地を仕入れて、住宅をはじめオフィスビルやホテル、商業施設や物流センターなどを建設し、そのなかのモノを売ったり貸したりして利益を得るというビジネスで、開発、賃貸、売買、仲介、管理があります。

この不動産ビジネスでいちばん安定的なセグメントは、やはり住宅を対象とした不動産投資です。コロナ禍でも需要が大きく減ることがなく、価格も都心では上昇傾向が続いています。居住用不動産は人の住まいですから、需要はなくなりません。

アメリカの金融引き締めにより、ここ数カ月間、円安傾向が続いています。円安の影響で日本の不動産は海外投資家の投資対象になっています。海外投資家は、もともと世界中の都市のなかで東京の不動産に魅力を感じています。東京の物件は、急激な円安で割安感がある一方で、賃料は国際的にみても安くないため、海外投資家にとって非常に魅力的なのです。不動産でも買い負けすれば将来的にはどうなっていくのか。不安材料の1つといえるでしょう。

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