「インボイス」賛成派・反対派の主張で見えた問題 そもそもこの制度とはどんなものかも、解説
世の中では「消費税=預り金」だと広く認識されており、この考え方によると、預かっているお金を自分のポケットに入れるのは「横領」と同じことであり、益税など本来は認められるものではないという結論になる。インボイス制度は、その益税の問題を解決に向かわせ、適正な課税を実現するための制度だと説明される。
それゆえ、「消費税=預り金」との前提で考えてしまうと、
一般消費者の賛成も得やすい
では、一般消費者である国民はインボイス制度をどう受け止めるだろうか。
筆者は多くの人が、インボイス制度に賛成するのではないかと考える。なぜなら、 事業者が顧客から受け取った消費税は「預り金」であると理解されているから納税すべき。この一点に尽きる。
今は、一般消費者は店で買い物をした際に、その店が消費税を納めていない免税事業者なのか、消費税の申告および納税を行っている課税事業者なのか見分けられない。
一方、支払いの際に受け取るレシートなどには、「消費税〇〇円」と記載されているのが一般的で、当然、消費税部分も含めてお店に支払っている。レシートに記載がなくても、消費税を含めて請求されていると(無意識にせよ)思っているのではないか。消費者からすると、「私はいつも消費税を支払っている」という認識であり、まさか、そのお金を事業者が益税で受け取っているなど思わない。
消費者からしても、益税は解決するべき問題であり、それを解消に向かわせるインボイス制度には賛成しやすいといえるのだ。
一方で、“事業者の現実”にも目を向けてみたい。
たとえば10万円のモノやサービスを、消費税を上乗せして税込み11万円で問題なく売れるのは、恵まれた立場の事業者だといえるだろう。
需給バランスにおいて需要が供給より少ない状態だったり、供給者(売り手側)の立場が弱かったりすれば、供給者は価格交渉において不利になり、10万円のモノを税込み11万円ではなく、税込み10万5000円だったり、税込み10万円として販売せざるをえない。この傾向は、とくに中小事業者に大きい。
そうなると、立場の弱い中小事業者にとって益税部分は現実には預り金ではなく、価格交渉にさらされることがない「確実に確保できる(わずかばかりの)利益」ともいえる。
本来10万円のモノを税込み11万円で売ることができない中小事業者が、インボイス発行事業者の登録を受ければ、消費税の申告と納税が必要になり、この部分の利益(だと思っていた益税部分)が吹き飛んでしまう。
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