5thプリウス登場も「BEVシフト混迷期」である訳 電動化戦略を見直さざるをえないメーカーの今

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つまり、プリウスの軌跡を辿れば、「稀有なクルマ」として登場して「次世代トヨタの牽引役」となり、5代目となった今「トヨタらしい、普通の素敵なクルマ」になったのだと思う。

今回、ハイブリッド車としては超成熟期を迎えたプリウスだが、気になるのはBEVを含めたトヨタの電動化戦略の全容だろう。

直近では、2022年10月24日に「bZ」の名を持つBEVシリーズの第2弾、「bZ3」が中国向けとして公開されたが、このタイミングで、「トヨタが2021年12月に発表したBEV戦略の大幅な手直しに着手している」との一部報道があり、業界内がざわついた。

2021年12月14日の「バッテリーEV戦略に関する説明会」で公開されたBEVのプロトタイプ(写真:トヨタ自動車)

本件について、筆者にも各方面から問い合わせがあるが、同報道の真偽にかかわらず、トヨタを含めた自動車メーカー各社が足元で、短中期的な電動化戦略を見直さざるをえない状況にあるのは事実だと思う。

ヨーロッパとアメリカの動き

その背景として大きく影響しているのは、ヨーロッパのバッテリー規制とアメリカのIRA(インフレ削減法案)である。

ヨーロッパのバッテリー規制では、バッテリーの材料採掘から製造に至るまでのCO2削減量を“見える化”する「カーボンフットプリント」明示の必要がある。採掘や精錬工程などおける、環境や人権に対する配慮などを含めたものだ。

中国で発売したトヨタのBEV専用モデル「bZ3」(写真:トヨタ自動車)

自動車メーカーは、バッテリー事業に直接関与する立場として、またはバッテリーメーカーからバッテリーを購入する立場として、さまざまなケースを想定した事業計画を策定することが急務となっている。また、ヨーロッパ委員会の初期案では、2026年から製造後のバッテリーの劣化状況などをデータ化して把握する、「バッテリー・パスポート」の運用も提案されている。

この分野について日本では現在、経済産業省が「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検討等に関する検証会」を立ち上げ、2022年9月22日に第1回会合を開催したばかりだ。

アメリカのIRAについては、2022年8月にアメリカ両院で可決されバイデン大統領が署名して成立した。

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