「開業170周年」で首都にSLが来る英国の本気度 名機「フライング・スコッツマン」が全国を巡回
1923年製の「フライング・スコッツマン」号はイングランド北部ヨークの駅横にある国立鉄道博物館で動態保存されており、展示物として見ることができる。タイミングがよければ、世界で唯一、外国で保存されている新幹線0系と共に一緒に写真に収められるかもしれない。
「フライング・スコッツマン」はこのSLの名称というだけでなく、ロンドンとスコットランドを結ぶ有名な優等列車の名前だ。この名の列車が運行を開始したのは、160年前の1862年のこと。イギリスの伝統的な列車として運行を続け、現在は日立製作所英国工場で生産された高速列車「クラス800」シリーズ「あずま」によって運行されている。
今回、キングスクロス駅に姿を現したSLの「フライング・スコッツマン」号は誕生の翌年、1924年にこの名称を与えられ、その後同列車の牽引機として活躍した。1928年5月1日に運行を開始した、ロンドン―エディンバラ間完全無停車の一番列車を牽引したのも、今回の60103号機(当時は4472号機)だった。
600km無停車のための特別な構造
10月14日前後にキングスクロス駅を訪問した同機は、その後100周年記念イベントとして、英国内各地にある保存鉄道をツアーすることが決まっている。客車を牽いて走ったり、停めた状態で運転台の見学をさせたりと、その期間と場所によってイベント内容は異なる。
筆者は、「フライング・スコッツマン」号が10月下旬から2週間ほど滞在した、イングランド南西部ドーセット州にある保存鉄道、スワネージ(Swanage)・レールウェイに足を運んだ。同鉄道では列車を牽引して走ったほか、運転台の公開もあり、筆者は国立鉄道博物館の担当者らからSLの諸元を聞くことができた。
同SLはロンドン―エディンバラ間631km、約8時間を無停車で走ることを求められていたこともあり、他のSLには見られない特徴的な構造がいくつもある。
600km以上を無停車で走る場合、まず課題となるのが乗務員の交代だ。1組のクルーだけでSLの運転という重労働を8時間続けるのは厳しいが、SLは機関車の後ろに石炭と水を搭載した炭水車を連結しており、通常だと後方の客車との行き来ができない。そこで走行中に乗務員の交代ができるよう、炭水車に貫通路を設置した。ここを通って、乗務員は客車と運転台を出入りして交代や休息したわけだ。通路はかがまないと通れない極めて狭いものだ。
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