窮地の岸田首相、政権維持へ表沙汰にできない秘策 閣僚辞任ドミノで支持率落ちても強気なワケ

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その一方で「首相の『解散せずに任期3年全う』というのは絶対に表沙汰にできない“秘策”」(同)でもある。「次期総裁選不出馬を明かせば、政権はすぐ死に体化し、何もできなくなる」(自民長老)からだ。

このため首相は、側近らや安倍派幹部の松野博一官房長官などを通じて、来年広島サミット後の衆院解散説を流すなど、「求心力維持への手練手管に腐心している」(同)とされる。自民党内でも、「首相は虎視眈々と解散の機会を探っている」(若手)と受け取る向きが多い。

もちろん、麻生太郎自民党副総裁ら政権を支える最高幹部は「薄々、首相の本音を感じ取っている」(首相経験者)のは確かだ。ただ、「それはあくまで暗黙の了解で、麻生氏も当面は早期解散論を主張し続ける構え」(同)とみられている。

首相が参考とするのは、三木武夫元首相(故人)の政局対応だ。約半世紀前、「金権批判」で退陣に追い込まれた田中角栄首相(故人)の後継首相となり、「クリーン三木」を売り物に、戦後最大のスキャンダルとなったロッキード事件での田中氏逮捕を主導したとされるのが三木氏。

「挙党協」に屈しなかった三木首相の粘り腰が念頭に

これに対し、三木・中曽根両派を除く田中氏逮捕に反発する党内各派が、「挙党体制確立協議会(挙党協)」を結成して1年半にも及ぶ激しい“三木降ろし”を展開した。しかし、三木氏はあえて解散で対抗せず、衆院議員の任期満了選挙に持ち込んで途中退陣を免れるという「政治史に残る粘り腰で任期を全うした」(自民長老)。

ただ、こうした首相の“秘策”には、なにより官房副長官や首相秘書官で構成する「官邸チーム」や、総裁派閥・岸田派の結束と支援が不可欠だ。ところが、国民の政権不信を招いた岸田首相の“朝礼暮改”は「まさに官邸チームの能力不足」(自民幹部)が原因とみられている。

さらに葉梨前法相や、政治資金スキャンダルで野党が罷免を要求する寺田稔総務相は、いずれも岸田派の主要幹部なのに、「首相を支えるどころか足を引っ張るばかり」(派若手)だ。これに関連して同派関係者は「親分のために命を懸ける議員が1人もいない」と嘆息する。

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