全階層で所得低下「共同貧困」に陥った日本の末路 日本人の給料が25年間上がらない「一番の理由」

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翻って、日本はどうでしょうか? 実はデータはこの20年間、日本では格差はそれほど広がっていないこと、国民の所得が全体的に落ち込み、日本は「共同貧困」と言えるような状況に陥っていることを示しています。

上の図は主要先進国における可処分所得のジニ係数の推移を示したものです。ジニ係数とは所得格差を示す代表的な指標で、0〜1の値をとり、0に近いほど所得が平等であることを表します。1995〜2018年までのジニ係数の変化をみると、どの国でもジニ係数は上昇しているのに対し、日本ではそれほど上昇していない、つまり、格差が広がっていないことがわかります。

さらに、厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、日本の平均所得金額は2018年に552万円と、20年前の1998年の655万円から100万円以上もダウンしています。

上の表は、人口を家計所得の少ない順に並べ5等分した所得5分位階級別に、1世帯当たり平均所得金額を1995年と2018年で比較したものです。これをみると日本では、すべての階層で所得が2桁以上、低下していることがわかります。

アメリカはすべての階層で所得がアップしている

これに対して、アメリカの所得を同様に5分位階級別にみると、1995~2019年の間に、すべての階層で所得が大きく増加していることがわかります。もっとも所得が低い階層の増加率42%に対して、もっとも所得が高い階層の増加率は58%となっており、たしかに格差は拡大しています。しかし、それでも全階層で所得が上昇しており、すべての階層で所得が低下している日本とは様子が大きく異なります。

格差が拡大するアメリカでは分配政策はきわめて重要ですが、欧米に比べて分配が平等な日本では分配政策は決して最優先事項ではありません。また、分配をするにしても元手が必要です。つまり、まずは経済が成長しなくてはいけません。今、日本に求められていることは、過去30年間にわたって経済が凋落してきたことを反転させ、再び成長軌道に乗せることにほかありません。

そこで重要なことは、資本主義としっかりと向き合い、マーケットで競争が起こるようにすることです。経済学者のジョン・メイナード・ケインズは「アニマル・スピリッツが失われると資本主義は衰退する」と説きましたが、アニマル・スピリッツの源泉となる競争が日本に欠けているのです。

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