全階層で所得低下「共同貧困」に陥った日本の末路 日本人の給料が25年間上がらない「一番の理由」

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競争不足の大きな理由の1つに、政府の政策があげられます。地域金融や中小企業政策など、旧来の日本の政策には、新陳代謝を遅らせ、競争を阻害する方向に働いたものが認められます。また、近年の大規模な金融緩和や大型の財政支援は、経済環境の「ぬるま湯」化を招き、本来、市場で生存するのに生産性が十分でない企業が操業を続けられる状況を作り出してきました。

日本経済が閉塞状態から脱却するためには、市場において、生産性の高い企業が進出し、生産性の上がらない企業は退出するという新陳代謝が行われる必要があります。「新しい資本主義」も重要ですが、まずは「当たり前の資本主義」を機能させ、市場でしっかりと競争が行われる必要があります。

資本主義を機能させるために必要なこと

どうすれば資本主義を機能させ、賃金の上昇や日本経済の再生につなげることができるのでしょうか? 私が考えるポイントは「労働市場の変革」にあります。

賃金を上昇させる要因はさまざまあり、何かひとつで日本の低賃金が説明できるというものではありませんが、主要因として労働生産性が低迷していることと、日本の労働市場がうまく機能していないことがあげられます。

賃金を上げるかどうかは経営判断であり、その基本は労働生産性と経済の見通しです。賃金を上げるためには、労働生産性が向上し、経済が成長しなくてはいけません。

では、どうすれば労働生産性を高め、経済を成長させることができるのでしょうか? 詳しくは『51のデータが明かす日本経済の構造』の中で説明していますが、労働生産性は、労働者の持つスキルや経験など「労働の質」、機械や設備など「資本の質」、そして企業経営のあり方や働き方、雇用制度から影響を受けます。

日本ではデジタル化のおくれや企業による人的投資の低下など、資本・労働の両方でその質が下がっており、それが労働生産性の停滞につながっています。しかしながら、これは決して、労働者一人ひとりの責任というわけではありません。従業員に教育や訓練を行うのも、デジタル化などの投資を行うのも、企業経営のあり方によって決まるのであり、経営判断、さらに言えば、経営者の能力が生産性に大きく影響を与えます。

経済環境が厳しく、将来の見通しが立たない中では、利益を内部留保としてため込み、安全運転経営をするというのは、企業にとっては合理的な選択かもしれません。しかしながら、本来、経営者にはどのような環境であっても勝ち抜く経営判断が求められます。日本で労働生産性が低迷する背後に、日本企業の経営判断や経営戦略の隙がなかったかと言えば、決してそうとは言えないでしょう。

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