全階層で所得低下「共同貧困」に陥った日本の末路 日本人の給料が25年間上がらない「一番の理由」
上がっていないのは物価だけではありません。賃金も日本ではこの25年間ほぼ横ばいです。これに対して、アメリカやイギリスでは約1.4倍に、ドイツでは約1.2倍になっています。つまり、他の先進諸国で物価や賃金が上昇してきたなか、日本では物価も賃金も上がってこなかったため、相対的に日本の物価、賃金は安くなっているのです。
この25年間、海外で賃金が上昇する一方で、日本で賃金が上がっていない事実は、日本の競争力が低下していることの象徴です。国民の豊かさを表す指標としてよく用いられる1人当たり名目GDP(国内総生産、ドル換算)をみると、日本の数字は2000年代初頭まで世界トップクラスで、一時はアメリカよりその値が大きいこともありましたが、その後世界におけるランキングは低下。2021年には世界で28位となっています。
なぜこれほどまでに日本経済は停滞してしまったのでしょうか。その理由を探るために、私は各種国際統計・データから、日本経済の構造を明らかにしようと試みました。その結果、見えてきたのは、日本特有の経済構造、いうなれば「未熟な資本主義」ともいうべきものでした。
日本経済の停滞要因は「未熟な資本主義」にあり
近年、「ポスト資本主義」や「資本主義の終焉」という言葉を耳にする機会が増えました。世界では資本主義を見直す動きが高まっています。1980年代から、市場や競争に任せるとうまくいくという「新自由主義」と呼ばれる考え方が台頭し、この思想に基づいた経済政策は、経済成長に大きく貢献しました。しかしながら、所得格差や貧困の拡大、さらには地球環境問題など、さまざまな弊害が生じたことから、その見直しが進んでいます。
日本でも岸田文雄首相が「新しい資本主義」を掲げ、経済政策を推し進めようとしています。2022年1月に岸田首相はアメリカのバイデン大統領とオンライン協議を行いましたが、その際に格差や気候変動の問題に対処する「新しい資本主義」を紹介、バイデン氏に「私の選挙公約ではないか」と賛同されたと言われています。
アメリカでは一部の富裕層に富が集中し、格差が拡大しており、社会の団結を揺るがし、政治の分断が深刻化しています。社会の分断をなくし、アメリカを再び団結させることを目指しているバイデン政権にとっては、格差是正はきわめて重要であり、バイデン氏が岸田首相の「新しい資本主義」に賛同したことは理解できます。
実際、行き過ぎた格差は経済、社会によくない影響を与えるという見解もあり、政府が格差是正を行うことは重要です。しかし、格差が広がっているということは、資本主義がある意味うまく機能し、経済が成長した証とも言えます。
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